第25章 対面。
前審神者に会う宣言した私は
黒猫をつかまえて下さい…と、
堀川様にお願いをした。
"えっ…うん、ほんと?"
みたいな行こうか行くまいか、
悩んでいた堀川様は新鮮だった。
『山姥切様…視線が痛いです。』
私の隣でへとへとな私の
身支度を整えてくれながらも
今世紀最大の馬鹿だこいつは
みたいな視線がとても痛い。
山姥切『理解出来ん…
なぜ死に急ごうとするんだ。』
人を自殺志願者みたいに
言わないでくれませんかね。
私だって必死なのですが…
『死ぬとわかっていて
黙っていられる程の度胸は
備わっていませんから…。』
山姥切『ならば、尚更だろう。
アイツを此処に呼ぶなど…、』
『殺しに来るなら待つより
迎えた方が手っ取り早いです。』
訳が分からんと諦めた
山姥切様に微笑みかけ
ありがとう…と心の中で呟く。
策が無い訳では無いけれど
拒否される事を想定して言わない。
これは私が死ぬか生きるかの
どちらかしかないのだから。
堀川『お待たせ、』
思ったよりも早く堀川様は
猫を連れてきてくれた。
夜でも流石の機動力
夜戦向きなのも頷ける。
『にゃ…。』
猫は好き、犬も好き
動物は大好きだけれど
この瞳の奥にいる奴は
好きにはなれませんよ。
私は猫を受け取って
ジッと見つめると猫は鳴く。
よく聞きなさい
前審神者…私は貴方を許さない。
そして貴方の強さというのも
認めざるを得ないでしょう、
けれど、私は逃げはしない。
震える声を何とか抑えて
『明日、お茶を共にしませんか。』
堀川『はっ!?』
山姥切『っ!?』
二人の驚きを聞きながら
猫の顎下を擽るとゴロゴロ
喉を鳴らして擦り寄った。
ほんとにこの子
前審神者の式神なのかなって
思うほど猫っぽい仕草に戸惑う。
『お待ちしております。』
返事の代わりに猫は一声鳴いて
私の指を舐めて立ち去ってしまった。
届いていればいいのだけれど、
堀川『ちょ待って…えっ…、お茶?』
『他に思いつきませんでした。』
山姥切『そういう問題では無い!!』
物凄い剣幕の山姥切様に
叱られながら泣きそうになる。
しょんぼりと肩を落とすも、
明日、前審神者と対面の日。
来れば、の話だけれど。