• テキストサイズ

狂気の傷痕【刀剣乱舞】

第23章 自我。


被せられた白き布はベールのよう…


『山姥切様…。』


山姥切『………。』


私は少し体を離し向き合い
視線を合わせて彼の両頬を手で包む


『この本丸に…貴方を比較する
者はいない…でしょう?』


山姥切『……………あぁ、』


『自分が写しへと執着しては
貴方の心が死んでしまいます…』


私は額をコツン…と合わせた。


山姥切『それでも…構わん。』


小さく呟かれた言葉は悲しきもので…


山姥切『山姥切国広の写しなど…っ』


小刻みに揺れ始め心が痛んでいる。


『偽物、じゃないじゃないですか。』


山姥切『………何が、言いたいんだ。』


そっと彼を覗き込み彼の唇へ
ちゅ…と自分の唇を合わせた。


山姥切『なっ…!?』


慌てた山姥切様は離れようと
するけれど、私は離れない。


『貴方は貴方らしく
生きてほしいんですよ…。』


比較する者がいない世界で
貴方は自分を比較しすぎている。


『山姥切国広として…生きて…
貴方らしい輝きをはなてばいい』


山姥切『そん…な、簡単に…っ
出来るわけが…ないだろ…。』


溢れ出す悲しき嘆き。


山姥切『俺、だって…ただ一振りの
山姥切国広として…生まれ、たかった

写し…ではない、俺を…っ、
どれだけ、求めて欲しかった事か…』


『山姥切様…っ』


山姥切『こんな…生きづらく…
ならずに…っ、済んだんじゃないか、』


私はぼろぼろ流れる涙で
彼が溶けてしまわぬうちに
目元に唇を寄せて涙を拭う


ちゅ…と、音をしながら
涙を拭えばしょっぱい彼の
涙の味が口の中に広がった。


『過去は…変えられません。』


だからこそ、前を見てほしい。


『貴方だけの未来がある…』


山姥切『写しの俺に、未来など…。』


『写しとか偽物とか本物とか
理想はいつだって残酷です…、

望んだようにはならない…。
だからこそ…現実と向き合うの…』


ビクッ…と彼は揺れた。


『向き合わなきゃ…
貴方の輝きが死んでしまいます。』


ちゅ…と彼の唇へ口付けする。
驚いた彼の目は見開き固まった。


山姥切『…っ!?』


『山姥切国広…唯一の私の刀。
美しき舞で闘うその勇姿。

貴方はかけがえのない家族…。』






(それだけは、変わらないんですよ。)





/ 279ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp