第4章 始動。
安定様がいらっしゃるという
部屋へ向かうと清光が入口に
神妙な面持ちで待っていた。
加州『あ、…あるじ…っ』
『ここに安定様がいるの?』
ゆっくりと頷いた清光は
部屋の方を向いて俯いた。
清光は今にも泣き出しそうな
くらい肩を震わせている。
『三日月様…ここで降ります。』
三日月『うむ、承知した。』
そう言って膝をつき
降りやすいようにかがんでくれた。
清光の雰囲気とは真逆に
三日月様は微笑んでいる…
全てわかっているような笑み
三日月『ところで…一つ良いか?』
『………はい?』
よっし、入るぞって時に
呼び止められ、服の裾は
清光に引っ張られていた。
(二人してどうしたのだろう。)
首を傾げれば三日月様が
先に口を開く。
三日月『良ければ三日月とは
呼ばず名で呼んでほしいのだが、
じじい、でも構わんぞ?』
(清光は別の意味で止めたのだろう
けど、まさか呼び名変更とは…。)
加州『あるじぃ…。』
どうやって呼ぼうかと悩んでいれば
清光が擦り寄ってきた可愛いな…。
加州『安定を…安定を…、』
強く握るその手も震え懇願する
清光に心が痛みつつ嬉しくなった
誰かを心配することは決して
悪いことではないのだから、
『清光…、』
泣きじゃくりながら私を見つめ
こてんと首を傾げた。
『すぐに帰ってきますよ。』
その言葉に清光は目を見開き
パチパチと瞬きを繰り返した。
三日月『ならば、
お茶の用意をしておこうか。』
『えぇ、
人数分あれば嬉しいのですが…。』
三日月『よし、待っておるぞ。』
三日月様は何人分とは聞かず
清光の頭を撫で背中を押した。
『帰ったら…呼びますね?』
三日月『楽しみにしておるぞ。』
呼ぶ意味が名を呼ぶという事が
三日月様はわかっているとでも
言うように微笑んでいた。
二人の背中を見つめ前を見据え
部屋の襖をゆっくりと引いた。
『失礼します。』
開けた先に正座をしている
安定様の姿があり目の前には
彼の本体である刀があった。
あぁ…そうか、ここは。
安定『………。』
刀を壊す場所、私がもっとも
嫌いとする"刀解部屋"だ。
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