第23章 自我。
写し…それは人間の身勝手な
行いによって生まれた刀。
けれど山姥切国広は
第一の傑作と聞いている。
私は彼に近づきたくて
布団の掛け布団を一枚引っ張る。
グイッ…と引きバッ…と広げ
頭から被る。
布は違えど似たもの同士。
山姥切様見てください、お揃いです
山姥切『写しの俺の真似をして…
馬鹿にしてるのか、貴様は。』
私は無言のまま近付いて
立ち上がった彼の前に立った。
頭から被った布は私に舞い降り
姿さえも隠してくれる。
『同じ写しとして貴方と
対等に会話がしたいだけなのです』
山姥切『何を…言っている…。』
立ち上がったまま私を見下ろす
山姥切様は腹を立てたように俯く。
山姥切『馬鹿にするのも
いい加減にしろ!!何が対等だ!
俺を見下しているんだろう!!!』
『この本丸の前審神者の代わりに
来た私は正真正銘、写しですよ。
簡単に言えば審神者の使い回し
政府の道具…人の身としてこの立場…
ね、山姥切様…貴方と私、
似ていると思いませんか…?』
山姥切『………お前は…っ、
期待されているではないか…っ
期待されてここに来て…
刀であるあいつらからも…っ、
お前は…必要とされているだろっ』
吐き出される言葉に
感情を激しくぶつける山姥切様。
山姥切『ただの道具である…
写しの俺とは…立場が違う…っ!!
お前と…俺は…っ
望まれる価値が違いすぎるっ!!』
悔しそうな表情を布の下から
覗き込めば彼は悲しそうに叫ぶ
山姥切『俺とお前を一緒にするな
何が似ているだ…っ!ふざけるな!』
ここで私が手を出さなければ
何もされずに済むだろう。
彼を追い出すか私が出ていけば
怪我もなく事を抑えることも出来る
けれど、それでは意味が無い。
『山姥切様…。』
被っていた布を肩にかけ向き合う。
どれだけ怪我を負ったとしても
私は山姥切国広を見捨てない。
伸ばした手は彼の頬に触れる
息を荒立てた彼の顔は熱い…。
『貴方は山姥切国広です。』
その言葉の瞬間…
山姥切『うわぁぁぁっ!!!』
山姥切様の叫びと共に
私は床へと叩き付けられた。
『…ぃ゙。』
私に覆い被さる彼は最早
衝動のまま動く獣のようだった…。