第23章 自我。
数珠丸様の布団はあるにしろ
一緒の布団で眠っていた。
軽く肌着を羽織るものの
彼の体温は心地よく直接
触れられているような温もり
(………寝付けない。)
腰の痛みも加わって眠れない。
抱き締められている時間をただ
黙って過ごしていると
とてとて…とてとて…。
襖に猫らしき影が現れた。
この本丸に猫といえば
あの一匹しか思い当たらず
数珠丸様を起こそうかとも
考えたけれどやめた。
ただ通り過ぎるだけだろう
そう思いたかった…けれど、
かりかり…、
猫は襖を開けようと爪を立てる。
"にゃー。"
何が、にゃーだ。
一声鳴いた猫に文句をつければ
かりかり…かりかり…と
爪を立て無理やり鼻を押し付けて
ぐりぐり額を押し付けて少し開く
襖に潜り込み侵入大成功を成し遂げる
何してんだ、開けんな馬鹿。
締めるの誰だと思ってんだっ。
心の中で悪態つきながらも
とてとて…と私の目の前に座り
猫は尻尾を振る。
碧眼の瞳で私を見下ろし
一声鳴くかと思えば違った。
ぶわ…と嫌な気配が私を襲う。
私だけに向けられた殺意が
この猫から溢れ出し冷や汗をかく
『………っ、』
数珠丸様の手から逃れ
この猫をどうにかしなければ
そう思い立った時、
猫『"やめときなよ"』
『………イラッ。』
猫を媒介に猫を通じて
私に語りかけたのは青年の声。
前審神者が猫の姿を
借りて話しかけてきたのだ。
いい度胸してると同時に
舐められていると腹が立った。
猫『"今君に出来ることは無いよ"』
猫をどうにかしても無意味な事くらい
わかってますけどそれが何かっ。
無性にイライラしてきた私に
前審神者の声はクスクスと笑う。
猫『"近々、会いに行くよ。
僕の刀剣達をよろしく、お嬢ちゃん"』
ハハッ、殴りてぇ。猫を、ではない。
猫を通して語りかけている奴にだ。
猫は用は済んだとばかりに
部屋から颯爽と立ち去った。
少しだけ開いた襖から差し込む
月明かりが私の無力さを照らす。
結界が緩んでいる…証拠だから。
猫を媒介に私と会話する隙を作らせ
宣戦布告をされた悔しさに泣いた。
数珠丸『………大丈夫ですよ。』
震える私を撫でる数珠丸様の
手は何よりも優しくて心地いい…、
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