第15章 嫌悪。
『げほげほ…っ…ぇほっ。』
離された手から突然
入り込んでくる空気に噎せた。
噎(む)せながら息を整わせ
必死に意識を保とうとすれば
抱き締めていた蛍丸様は
震える体で泣き出した。
蛍丸『ひっ…く、うぁぁぁ…っ。』
守りたいのに守れない
歯痒さはどれほど苦しいだろう
『もう…大丈夫ですよ、
私が来たからには私が護ります。』
ゲホッと噎せてしまえば
台無しかもしれないけれど
それでも貴方を守りますよ。
国行『遅すぎんでホンマに…。』
愛染『蛍…良かった…ほんとに、』
明石様が片方の手を開け
隙間を作れば愛染様が飛び込んで
愛染様は蛍丸様を抱き締めた。
蛍丸『くにゆきぃ…くにとしぃ…。』
皆で皆を包むように
抱き締め合えばもう大丈夫。
ここにみんなが居てくれるから。
『温かいですね…蛍丸様…、』
蛍丸『うん…うんぅ…っ。』
ぐりぐりと擦り寄ってくる
蛍丸様を撫でれば明石様が
嬉しそうに微笑んだ。
国行『主はん…ほんまおおきに…
感謝してもしきれんくらいやわ。』
愛染『すげぇよ…すげぇ!
国行も蛍も帰ってきたっ!』
まだ軽くゴホゴホする私に
明石様は背中をとんとんしてくれた
『私だけの力じゃないですよ…』
蛍丸『………っ?』
『みんながみんなを想う気持ちが
心に届いたからこそ、ですよ。』
私の言葉に三人は力強く
確かにここにあると求めるように
強くお互いを抱きしめ合った。
蛍丸『一人はやだよぉ…。
皆と一緒がいい…っ。』
国行『当たり前やろ…。』
言葉一つ一つが温かい…
幸せとはこんなにも近くにある
掴めないものほど欲しくなる
今やっと…手にしたんですね。
『よか…っ…た…、』
愛染『主さん!!』
ホッと息をついた途端に
意識がフッと途切れた。
誰かに受け止められた気がする
誰かに包まれている気がする。
もはや何となくでしか認識が
出来なくなって悲しくなった。
じんわりと感じる温もりが
心地よくて…眠くなる。
蛍丸『あるじぃ…。』
蛍丸様の声を最後に私は
瞳を閉じて眠りについた。