第3章 誤解。
朝、起きた清光は命令が欲しいと
寝ぼけた私に懇願してきた。
霊力で治した事で調子がいい
何でもすると譲らない。
何かをしなければ捨てられる
その概念が彼を蝕んでいたのだ。
命令する程の事ではないけれど
言い方次第ではどうとでもなる。
『一緒にいて欲しいです。』
(子供かっ。)
何言ってんだ私は…なんて
思っていれば清光はタックルに
似た勢いで抱きついてきた。
嬉しかったようで何よりです。
腕の力緩めてくれたら嬉しい。
お腹にグリグリと押し付ける
頭を撫でながらこんのすけに
振り向いて微笑むと合わせて
こんのすけも微笑んでくれた。
清光が落ち着くまでの間
取り寄せてほしいリストを書き
こんのすけへと手渡した。
最後の項目に書いたモノに
顔を曇らせながらも渋々と
首を縦に振ってくれた。
こん『主様…
少し遅れるやもしれませぬ。
必ず…必ず用意致しますので…。』
険しい顔のままリストを
睨みつけるこんのすけが可哀想に
思えてきた。
こん『では…っ。』
こんのすけ専用ゲートで
本部へと消えたこんのすけ。
さて、私はこの本丸で
審神者として働きますか…
加州『………へへ、』
腰にしっかりと抱きついた
清光に何も言えず頭を優しく
撫で続けこんな朝もいいか…
なんて甘いことを考えた。
彼にされた事を
忘れた訳じゃないけれども…。
『審神者ってなんだっけ。』
乾いた部屋に意味を持たない
言葉が溶け消えた。
加州『あるじぃ…。』
頭から頬をムニムニと弄りながら
甘える清光に言葉をかけ部屋から
出ようと声をかけた。
二つ返事で着いてくる彼に微笑み
そっと部屋をあとにした。
ボックスに荷物が届かない間は
苦労するなぁと他人事のように
考えながら仕事量にため息をつく
(何とかなるよね。)
嬉しそうに着いてくる
清光の笑顔に悩みも適当に流し
二人分の足音を響かせた。
(彼らを守るためにも必要なのモノ)
"刀を二本、用意してほしいの。"
今頃こんのすけは走り回って
哀しそうな表情をしていないかな…。