第13章 信頼。
『………ん。』
酷使し過ぎた体が痛み
ふと目が覚めると大倶利様が
こちらを向いて私を見下ろす。
大倶利『眠れないのか。』
『…、うん。』
こく…っと頷けば大きな手が
私の頭を抑えてぎこちない
手つきで撫でてゆく。
私のお腹には燭台切様の手が
添えられていて温かい。
『大倶利様…、』
大倶利『なんだ。』
『ここに…この本丸に
私の居場所はないのだと思います。』
わかってた無理やり割り込み
ここが居場所だと思わせた事
でも、気付かないフリをした。
『でも、私は居場所が欲しいのです』
大倶利『ここじゃなくても
お前の居場所はいくらでもある。』
『この本丸は地獄だと思いますか。』
私のこの質問に大倶利様は
口を閉ざして沈黙する。
燭台切『鍛刀された直後は…ね。』
ピクッ…とお腹の指が動き
ゆっくり撫でたてた…肉バレる。
燭台切『今は…その影さえないよ。』
『良かった…、』
大倶利『何故ここに執着する。』
大倶利様は私の首筋へ手を這わせ
噛み付いた首筋を手のひらで包む。
『痛みを、知ってるからですね。』
人間の身勝手も強欲さも
刀剣達の苦しみも痛みも知っている。
だから、こそここに居たい。
『喜びを知って欲しいのです。』
燭台切『喜び…か、』
大倶利『必要ないな、』
バッサリと切り捨てた大倶利様
首に這う手をそっと掴んだ。
『私の事は信じなくてもいい
信頼しなくてもいいですよ。
ただ…、』
私は顔を伏せて苦笑いを浮かべた。
『仲間だけは信じて下さい。
同じ痛みを味わった仲間だけは
どうか…裏切らないで下さいね。』
大倶利『………。』
燭台切『どうしてそこまでするんだい
君は散々、酷い事をされたと言うのに』
お腹をきゅっと押され
背中との距離が近づいた気がした。
『泣けない人が縋ってるのに
見捨てられる訳がないでしょう。』
居場所が欲しいと思う私が縋る
その手を掴まないでどうします。
『私に対する行為は許されません。
けど、縋りつくその手を振り払う程
私は人間を捨ててないんですよ。』
私に対する感情の爆発は
押し殺した心の叫びだから
私はその手を掴んであげたい。
『温もりだけは忘れないで…、』
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