第7章 可愛いお前の虜 / 伊達政宗
「傷が、あまり良くなってない、だと」
政宗は、家康に憮然な顔で言った。
家康は神妙に頷く。
舞には言わなかったが、傷の治りが遅いと言うのだ。
「傷の数は多いけど、そんなに深くないから、もう治ってもよさそうなんですが……なんか目を酷使するような事、させてませんよね」
「させてない。 一日中大人しくしてるし」
「舞の事だから、ちょっと良くなると無理するかもしれない。 しっかり見張っといてください」
家康の助言に、政宗は憮然としたまま頷いた。
(酷使するほど、何もしてないしな……)
その夜、ひとつの布団で舞を傍らに抱きながら、政宗は考え込んでいた。
舞は政宗にひっついて、すやすや寝息を立てている。
目には包帯をきっちり巻いているし、ほとんど一緒にいるし。
(これ以上見張っとけと言われてもな)
舞の温もりが心地よく、睡魔に襲われ……
政宗は静かに目を閉じた。
夜更け過ぎ。
政宗は懐に寒気を感じて、目を覚ました。
気がつくと、胸に抱いていた筈の舞が居ない。
「舞……?」
呼びかけても、当然の事ながら返事もない。
外はまだ真っ暗だ、何処へ行ったと言うのか……
(ん……?)
政宗は、襖の隙間から光が漏れている事に気がついた。
襖の向こうの部屋に、明かりがともっているらしい。
乱れた夜着を簡単に整えると、政宗は起き出して襖をそっと開けた。
向こうには行灯(あんどん)が灯り……
そこに、舞は居た。