第46章 満天恋月 ー 織姫争奪戦 ー / 三成END
舞を賭けた、武将同士の争奪戦。
舞が三成の用意した浴衣を着てきた事で、軍配は三成に上がり、争奪戦も幕を閉じた。
さぁ、ようやく舞と二人で七夕祭りと、意気込んでいた最中……
空はどんより雲が覆い。
その鉛色の空からは、冷たい雨粒が降り注ぎ始めていた。
「雨、降ってきちゃったね……」
城の庭先で、舞が少し寂しそうに声を上げる。
その何とも残念がる様子を隣で見て、三成は思わずそのすみれ色の瞳を細めた。
舞が身にまとう、薄い紫に矢羽と手毬柄の、大和撫子のような浴衣。
それは、この石田三成が舞の為に選んだ浴衣で、それを着ていると言う事は、舞は自分を選んだと言う事。
────想いが通じ合っていた証
心は浮き足立ち、やっと舞と二人っきりで市へ逢瀬に出掛けられるとと思いきや……
外はあいにくの雨。
せっかくの七夕なのに、星も見えないし、これでは七夕飾りも無理だろう。
「残念だなぁ……せっかく市へ出かけられると思ったのに」
「舞様……」
舞が明らかに残念そうに俯く。
きっと舞も一緒に市へ出かけ、七夕を祝うのを楽しみにしていてくれたのだ。
ちょっとした罪悪感が襲う。
こんな舞の顔は、出来ればあまり見たくない。
(舞様をがっかりさせられない、雨でも楽しめる七夕祭り……)
思考を一生懸命巡らせる。
戦の戦術を考えるのは得意だが、姫君を喜ばせるのは慣れていないため、これと言って名案も浮かんで来ない。
どうするか……と手をこまねいた時。
(あ、朝顔が……)
城の庭先にある、一つの鉢に目がいった。
雨に打たれても、健気に花びらを広げる朝顔。
その蒼い花びらを見ていたら、ある一つの『七夕の謂れ』が頭によぎった。
今日は七夕。
今は雨だけれど、もしかしたら……
「舞様、市へ出掛けませんか?」
隣にいる舞の手を取り、市へ誘う。
舞は『え?』と、キョトンとした顔で首を傾げているので、そのままにっこり笑って説明を続けた。