第44章 満天恋月 ー 織姫争奪戦 ー / 政宗END
「織姫は、ここに居るからな」
自分の声では無いような甘い声色で、舞に囁く。
そのまま顔を近づけ、半開きの唇をちゅっと啄んだ。
「お前だけが…俺のたった一人の織姫だ」
「政宗……」
「この世でたった一つのお前に、俺だけのお前に、巡り会えた。だからお前は…俺の織姫だろ?」
「…っっ」
「なぁ、聞かせろよ……何を願いたいんだ?」
舞の髪を優しく指に絡めながら問いかける。
すると、舞は照れたように頬を染め『耳を貸して』と言ってきた。
そのまま、顔を横に向け、舞の口元に耳を寄せる。
舞はひそひそ話をするように、口元に手を当てながら。
小さな可愛い声で、耳の中に願い事を吹き込んだ。
「…っっ、お前な……」
それを聞いた瞬間、馬鹿みたいに顔が火照るのを感じた。
舞の、可愛い可愛い願い事。
決して自己を押し付けない、その無欲な舞が願った。
───馬鹿らしくも健気で、愛しい願い。
「……了解した」
舞の額に一回口づけを落とし、瞳を覗き込む。
夜空を映すその瞳は光を宿し、怖いくらい澄んで輝いていて。
(ああ、こいつが一番綺麗だな)
そんな甘い感情が、心を満たしていく。
その幸せな感情に突き動かされるまま、唇を重ねた。
優しく舌先を蕩かし、深く深く、奥まで奪う。
次第に腕はお互いの身体に回され、二人で絡み合うように……
甘い水音を響かせながら、また甘美で色濃い空気に飲まれていく。
「俺の傍にいて、不幸になんてなれると思うなよ?絶対……幸せにしてやる。何も考えられないくらい気持ちよくしてやるから、お前は俺に溺れていればいい……愛してる、舞」
───舞が願った、ささやかで儚い願い事。
『政宗とおばあちゃんになっても一緒に笑っていられますように』
その願いを叶えるために。
命燃やして、生きてやる。
一秒でも、一瞬でも長く。
そして、祈ろう。
天翔る恋人達に、一言だけ。
『舞の一生は、俺が守る』
満天恋月 ー 織姫争奪戦 ー
政宗END 終