第38章 一触即発禁止令 / 明智光秀
「今日は御殿で寝ていろと言っただろう」
「で、でも……」
「でもじゃない、いい子なら言う事を聞け。送って行くから、帰るぞ」
「ふわぁい……」
光秀に横抱きにされ、運ばれる舞。
そんな二人を、政宗は目を点にして見ていた。
「……仲良い事はいい事……だけど」
出来れば舞のあんな顔は見たくない。
疼いてしまうから。
政宗はそんな事を思い、思わずため息をついた。
―――…………
「光秀さん、ごめんなさい……」
光秀に褥に寝かされながら、舞はしおしおと光秀に謝った。
光秀はゆっくり舞の身体を横たえ……
そして、優しく頭を撫でる。
「いや、昨夜貪り過ぎた俺のせいだ」
「そ、そんな事ないです、わ、私は……!」
舞は光秀の袂(たもと)を手で掴み……
光秀の顔を見ながら言った。
「すごい幸せだったから、こんなの大丈夫です、今も……幸せです」
食い入るようにこちらを見つめる顔は、昨日の情事を思い出させるような、艶のある表情で。
(本当に……この娘は……っ)
光秀は火照り始めた身体を必死に堪え、舞の額に口付けを落とした。
「煽られると優しく出来なくなるから……勘弁してくれ」
「光秀さん……」
「俺はお前を大事にしたいんだ、解れ」
「……っ」
「愛している、舞」
気がつけば、みるみる舞の瞳には涙が溜まってきていて……
本当にこっちの言いたい事が解っているのか。
光秀は優しく舞の額を撫で、そして思った。
こんなに溺れてしまって、自分が情けないけれど。
相手が舞なら、それも悪くない。
愛しい恋人が穏やかな寝息を立てるまで。
その可愛い顔を、穏やかに見つめ続けたのだった―……
終