第34章 桜の追憶『狂想恋歌』 / 石田三成
「不安にさせて、ごめん……っ」
「三成君……」
「心は離れていませんよ……むしろ近づきすぎて、怖かったんです」
愚かな自分。
こんなに舞を追い詰めて……
この人を守るつもりで、本当は自分を守っていたのだと。
「貴女の事が好きになりすぎて……自分だけのものにしたいって、ずっと思っていました。 貴女の深い奥底まで、何もかも欲しいって……えげつない自分が、怖くて」
「……っ」
「身体を求めてしまえば、この醜い心が伝わってしまう気がして…どうしても貴女を抱けなかった。 火照る身体を持て余しても、でも……っ」
伝えきれない感情が嗚咽となって溢れ出る。
すると、舞は背中に腕を回してきた。
「じゃあ、私も醜いのかも」
「え……?」
「だって私も同じ事思ってるから……三成君が欲しいって」
「……っ」
「それに」
少し顔を上げて舞を見ると、舞は花のように微笑んでいた。
そして、はにかんだように言う。
「とっくに私は……貴方だけのものですから」
心のもやが、一気に晴れていく。
もう……限界だ。
「……っ舞…………っ」
三成は小さく唸るように吠え……
小さな身体を、己の心のままに、求めた。
初めて暴いた舞の素肌は、とても綺麗で熱かった。
その透き通りそうなほど白い肌に、伸びるしなやかな肢体。
着物を滑り落とし、手を這わせれば、舞は聞いたこともないような甘い声を上げた。
「あ…っんん……っ」
白い背中に音を立てて、口付けていく。
唇の通った所には、赤く花びらのような痕が残り……
三成はそれを指でなぞると、くすっと笑った。
「赤く……なっちゃいましたね」
「ん……っ」
「でもこれ、ちょっと嬉しいですね。 私のものって言う証みたいで」
「……っ」
「前にも、つけていいですか?」
舞が小さく頷いたので、身体を転がし、正面で向き合う。
そして、首筋から鎖骨、肩。
至る所をついばんでいき……
悶える舞の胸の膨らみに、そっと手で触れた。