第32章 弥生月の願い鶴 / 豊臣秀吉
秀吉の指に、湯とは明らかに違う、熱いねっとりしたものが絡みつく。
秀吉は舞の身体を肩で支えながら、あやすように背中を撫でた。
「この熱い蜜も久しぶりだな」
「……っ、これじゃ駄目なのに……」
「え?」
「秀吉さんのお誕生日なんだから、秀吉さんが気持ち良くならないと……」
舞の言葉に、秀吉はくすくす笑って、額と額をくっつけた。
「そんな事気にするな」
「気にするよっ」
「じゃあ……後でいっぱい気持ち良くしてもらう。今はお前に触れたいから、甘やかさせろ」
「秀吉さん……」
「だから、お前は大人しくしてろよ?」
そう言うと、また口付けの嵐が肌に落ちる。
秀吉の熱を感じながら、舞はそれしか知らないみたいに秀吉の名を呼び続けた。
「ごめんね、秀吉さん……」
秀吉に散々甘やかされて、すっかりのぼせてしまった舞は、秀吉に横抱きにされながら、部屋まで運ばれていた。
火照る舞の身体が、心地よい。
秀吉は、熱い舞の額に、そっと口付けた。
「俺のせいだよな、悪かった」
「秀吉さんは謝る事ないよ! 私は、その……」
「ん?」
「幸せで、嬉しかった、から……」
ちいさな身体を、さらに小さくさせて呟く舞。
すこしふてくされたような子供っぽい表情とは裏腹、濡れた髪や赤い頬が、やたら女の色香を放っていて……
(……駄目だ、全然甘やかし足りない)
「……秀吉さん?」
歩く足を早めた秀吉に、舞が不思議そうに問いかける。
今すぐ褥に押し倒したい。
そして、目一杯甘やかして、舞を全身に感じたい。
それだけを思って急いでると、部屋間近になって、舞が慌てたように暴れだした。
「ちょ、ちょっと秀吉さん降ろして!」
「なんだ、急に」
「いいから、ちょっと止まってっ」
舞は腕から降りると、小走りで部屋へと向かい……
襖を開けて、中を確認しているようだった。
「……部屋の中がどうかしたのか?」
近づいて声を掛けると、舞は襖を閉め、満足そうに笑って振り向いた。
「うん、大丈夫。 秀吉さん、中に入ってみて」
舞に促され、疑問に思いつつも襖を開ける。