第24章 見えない内に、戴きます! / 伊達政宗
宿の直ぐ側に温泉は湧いており、湯けむりが漂う。
そこにこっそり顔を出すと、舞が温泉に入っているのが見えた。
髪を上のほうに束ね、白い背中が湯気の間から見え隠れしている。
なんか歌とか聞こえるし……
(いい気なもんだ、俺の気も知らないで)
政宗は無性に腹が立った。
一方的とは解っていても、無防備に温泉に入る舞に、一泡吹かせてやりたいが……
……と、手に持っている手ぬぐいが目に止まる。
(…………そうだ)
その時、政宗に悪魔が微笑んだ。
思わず、口元が緩む。
政宗は浴衣を脱ぐと、手ぬぐいだけ手に持ち……
舞に気づかれないように、抜き足差し足で近づく。
側に寄っても、舞は全然気がつく様子は無い。
舞の真後ろまで来ると、そのまましゃがみこみ、頭の高さを合わせ……
そして、後ろからそっと耳元で囁いた。
「…………舞」
「……えっ…………わぁっ!」
瞬間。
政宗は手に持っていた手ぬぐいで、素早く舞の目を覆った。
頭の後ろで、しっかりと結び、目隠しをする。
これで舞は、何も見えていない筈だ。
「え……っ、何、誰、ちょっとーっ!」
舞は何が何だか解らないと言った様子で、あたふたしている。
目隠しを取ろうとするので、政宗は反射的に舞の手首を後ろから掴み、それを阻止した。
「……大人しくしてたほうが、身のためだぞ」
「え、誰、政宗? 政宗なの?」
「さぁ、誰だろうな」
政宗は舞の手首を掴んだまま、ゆっくり湯船に入った。
そしてあぐらをかくと、その上に舞を後ろ向きで座らせる。
手首は腹の所で交差させ、片手でしっかり固定した。
「ま、政宗、何するの……っ」
「俺が政宗じゃなかったら、どうするんだ?」
「その声は、どう聞いても政宗じゃないっ」
「しー……静かにしろ」
政宗は、舞の白いうなじに唇を寄せた。
途端に舞の腰が、ぴくっと跳ね上がる。