第22章 甘味よりも甘い物 ~極甘蜜の罠~ / 明智光秀
「光秀、悪い、起きてるか?」
秀吉の声だ。
今襖を開けられたら、たまったものじゃない。
光秀は乱れた着物を簡単に整え、毛布を舞の頭までかぶせると、起きて立ち上がり、襖を開けた。
「どうした」
「朝早くに悪いな。 緊急の用事があって……中入っていいか?」
「駄目だ」
一刀両断した光秀の言葉に、秀吉は目が丸くなる。
「なんで」
「舞が起きる」
「…………は?」
「舞が起きるから、駄目だと言ったんだ」
瞬間、秀吉は手に持っていた巻物達を、派手に廊下に落とした。
「はぁあああああ?!」
「五月蝿いぞ、秀吉」
「お、お前ら、いつの間に、そうなったんだ?!」
「いつでもいいだろう」
「良くない、舞は俺の妹だぞ?!」
「昨夜からは俺の女だ」
しれっと答える光秀に、秀吉は開いた口が塞がらない。
と、その時。
「光秀さん……?」
部屋の中から、起きたてのような舞の声が聞こえてきた。
それが決定打となり、秀吉は顔を真っ青にさせた。
「悪い、舞。 起こしたな」
「ちょっと待て、光秀! 話は終わってない!」
「俺はもう終わった、じゃあな」
「光秀!」
「これから舞をもう一度抱くから、邪魔するな」
ぴしゃりと襖を閉められる。
直後、部屋から聞こえてくる甘ったるい声。
「み、光秀~〜~〜~っ!!!」
秀吉の絶叫が、光秀の御殿中に響き渡ったのだった。
終