第21章 甘味よりも甘い物 / 明智光秀
「はい、光秀さん。 あーん」
光秀の自室で、舞が口に大福を運ぶ。
光秀は大人しく口を開き、一口かぶりついた。
別に食わせてくれなくても、自分で食えるのだが。
(まぁ、舞が喜ぶなら、いい)
大福を頬張ると、口の中に抹茶の味が広がる。
苦味を帯びた甘さに、思わず口元がほころんだ。
「うん、美味い」
「本当ですか?」
「ああ、俺が抹茶が好きなの、よく解ったな」
「秀吉さんから、茶の湯が趣味って聞いたから……なんとなく」
(成程な、秀吉か)
あれはあれなりに、気にしてくれていたらしい。
礼のひとつも言うべきか。
「しかし、舞。 菓子は美味いが……」
「?」
口についた粉を拭い、光秀はにやりと笑った。
「俺的にはもっと甘い物が食いたい」
「もっと甘い物? …………あ」
光秀は自然な流れで、舞を畳に押し倒した。
腕を顔の横で固め、組み敷く。
「光秀、さん……」
「お前の方が、もっと甘い、舞」
「……っ」
「意味が解るか?」
つ……っと指で唇をなぞる。
舞は短く息を呑んだ。
「……この前の続きがしたい」
「光、秀、さ……」
「もう……逃げるなよ?」
舞が小さく頷く。
それを合図に、光秀は舞に口付けた。
身体中に手を這わせ、まさぐって。
そして、舞の甘い声を聞く。
その声を聞き、愛の言葉を囁きながら……
光秀は焦がれてやまない、その小さな身体を。
力一杯、抱きしめたのだった。
終