第6章 Free!《橘真琴》
太陽も傾き辺りがオレンジ色に染まり始める
部活動が終わり遥と真琴は校門の前で
の姿を探す。
『遅れてごめんねっ』
きっと彼女の事だから僕たちの姿をみて
走ってきてくれたのだろう
小さな肩が上下に動き
ふぅと小さく息を吐いた。
「んーん、お疲れ様」
『2人も、今日も部活お疲れ様!』
「ん」
「ありがと、」
幼馴染のは、僕らにとって初恋の相手で
中学・高校と、歳を重ねるごとに
綺麗になっていく彼女に日に日に思いが募るが
この3人でいる心地よさに、
思いを告げる事が出来ずにいる。
寧ろきっと思いを告げることは無いと思っている。
隣を歩く2人に視線を向けると
遥の話にはうんうんと、
楽しそうに頷き
口数の少ない遥も、彼女に対しては
ちょこちょこと、たわいもない話を
していたりして
彼女を見て嬉しそうに笑う遥のその顔は
「好きだ!好きだ!」と叫んでいる様で
自分の胸がズキリと痛くなる。
『まこちゃん?』
首を傾げながら、さっきから口数の少ない僕を
心配する声が聞こえる。
はっと彼女を見つめると、ふにゃりとはにかみ
『部活疲れちゃった?』
「んーん!そんなことないよ
ちょっとぼーっとしちゃっただけ」
ごめんごめん!と言うと
『そっか、良かった』
そう笑う彼女を見て同じように笑い返す。
もうずっと、ずっと毎日見てきたんだ。
愛しい彼女の笑顔が最近少しずつ
変わってきたことに気づいた時は
嬉しくて嬉しくて仕方がなかった
自分に向けられる彼女の視線に熱がこもっているのを
感じた時は、覚えたての中坊の様に
毎晩毎晩彼女を思った。
でも楽しそうに笑う2人を見て
どちらも選ぶことが出来ずに
僕は気づかないふりをする。