第2章 プロローグ
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舞衣からの着信だ
〈本日の交渉どうなりましたか?連絡がない様子ですとやはり、上手くいかなかったのでしょうか。
今からお勉強されるのですか?応援しています!
また明日、学校に玲奈の好きなあの店のマカロン持っていきますわね!〉
舞衣と連絡を取るといつも気が少し軽くなる。
生まれたときから交流があって、今もこうして付き合いがある。
それに、今のところ唯一私の雪生への進学を応援してくれている人だ。
さて、気も少し晴れたところで、お風呂に入る前にしっかり勉強しておかなければ。
***
やっぱり、ベルガモットが入っているときの湯船は最高。
ちょっとお嬢様っぽいことを話すと、花や果実や入浴剤を日替わりで湯船に入れている私の家。中でも私は柑橘類、特にベルガモットの香りが大好きでこのブルーな日にこの香りはすごくありがたい。無論、ボディーソープやボディーミルクなどは全てかんきつ系だけど。
「あの子、雪生に進学したいなんて言い出すのよ」
「別に月生のままでいいじゃないか」
書斎から、母と父の会話が聞こえてきた。
すぐに私のことだと察しがついた。
「でしょう?それに受けて万が一落ちたりなんかしたら」
「神崎の名に傷がつく」
「あの子は自分のことしか考えてないんですもの」
「勉強しなくたって、二階堂か常盤の家に嫁ぐ身だ。気にする必要などないのに」
しばらく聞いていようと思ったが、涙が溢れそうになり、その場を離れた。
部屋に戻ると途端に抑えていた涙があふれだしてきた。
身体に残るベルガモットの香りはもう、私を癒してはくれなかった。