第2章 スコッチ

それから何年か経った。私は高校１年、新一は中学１年になっていた。

私はお父さん経由で警視庁の目暮警部、蘭ちゃん経由で毛利探事務所の毛利探偵や妃弁護士、園子ちゃん経由で鈴木財閥の面々と知り合ったりと、私の交友関係はぐんぐん広がった。

この頃には新一は立派にシャーロキアンとしての頭角を現し、またそれに伴って探偵としても頭角を徐々に現した（ちなみにこの頃はまだ１人で事件を解いたことはない）。
そして──

「お姉さん、お誘いありがとうございます！」
「いえいえ。私も１人で買い物とか寂しいし、蘭ちゃんがいてくれてよかったよ」

今日は私と蘭ちゃんで杯戸デパートに買い物に来ていた。園子ちゃんも行きたがっていたけど、どうしても都合が合わず、今日は来ていない。
お母さんの買ってくれたたくさんの服も、もう小さくなって着られないものが大半。それに私はもう高校生である。自分の服くらいは自分で買いたい年頃だ。
だが１人で買い物に行くのは気が引ける。そこで蘭ちゃんと園子ちゃんを誘ってみたところ、蘭ちゃんは即オーケーが出たというわけである。

「わっ、これ可愛い！」
「ホントだ！でもお姉さんはこっちの方がいいんじゃないですか？」
「えー、そうかなぁ？」

きゃっきゃっと楽しくおしゃべりしながら買い物をする。
しばらくすると、自分の両手は買い物袋でいっぱいになっていた。

「あー買った買った！」
「結構買いましたね〜」
「だってセールやってるんだもん〜。帰り道大変になるねこれー」

あはは、と笑いながらデパートの中を歩き回る。と、少し離れた売り場の方がざわざわと騒がしくなった。

「何かしら？」
「イベントでもやってるんじゃないですか？ホラ、よくあるじゃないですか、ミニライブとか」
「確かによくあるけど……でもこれは、そーゆう騒がしさじゃなさそうね」

そう言いつつ私は人垣を縫って最前線に出てみる。と、キャップを被った男が女性を人質にナイフをでたらめに振り回していた。

「動くなよ！動いたらこの女ァ○¥▲□%☆◆＃◇＊……」

どうやら男は薬物を摂取しているようで、紡ぐ言葉は舌が回っておらず聞き取りづらい。だが言わんとすることははっきり分かった。

動いたら女性を殺す──そう言いたいのだ、要するに。