第6章 シェリー ──黒の気配
「あれ、コナン君じゃない。どうしたの?」
ニコッと笑う瀬里奈に、オレはニヤリと笑った。
「すっとぼけてんじゃねーぞ。オメーの正体はバレてんだよ、怪盗キッドさんよぉ!!!」
「!!!」
瀬里奈の表情が変わった。そしてフッと笑う。
「……どこで気づいた?」
怪盗キッドの声でそう問いかけてきた。オレはニヤリと笑ったまま言った。
「変だなと思ったのは展示室に来る前だよ。灰原が気づく気配に瀬里奈が気づかねー訳がねーよ。それに展示内容を聞いた時に『内緒』って言ってただろ?あれは展示内容を知らなかったからじゃねーのか?それにオメーは展示物の説明もしようとはしなかったしな」
そして瀬里奈は2人きりの時は“コナン君”とは呼ばないしな。
オレがそこまで言うと、キッドはひゅうっと口笛を吹いた。
「お見通しだな、名探偵。じゃあお姫様の居場所は分かるかな?」
「そんなもん推理するまでもねーよ。──出て来いよ瀬里奈。バレバレだぜ?」
はぁー、とため息をつく音が聞こえた。ガタガタと音を立てて大きめのロッカーから瀬里奈が出て来た。
「バレちゃったの?ダメじゃんキッド」
「うっせーな、オメーが情報もっとくれねーからだろ!?」
「ま、オレにバレたのが運の尽きだな。諦めてお縄になれよ」
オレが麻酔銃を構えた。あわわ、と瀬里奈がオレの後ろに隠れる。
「悪いねぇ、オレは今回は真っ白なんだぜ?見逃してくれたりしねーのか、名探偵」
「バーロ、犯罪者を見逃すかよ」
そこからは一瞬だった。キッドが煙幕を取り出し、オレが麻酔銃を撃った。
だがタタタ……という足音がして、「あーあ、取り逃がしちゃったね」と瀬里奈は苦笑した。
「瀬里奈はキッドと知り合いなのか?」
「さあ?私は知らない♪」
しれっとはぐらかした瀬里奈にオレは大きくため息をついた。
「ホラ、どうせあんたのことだから黙って出て来ちゃったんでしょ?早く戻らないと蘭ちゃんがうるさいわよ」
「バーロ、それはオメーも同じだろ」
「ハイハイ」
瀬里奈は軽くあしらい、颯爽と部室に戻った。