第27章 ギスギスしたお茶会
「しかし……病院で毒殺とはな……」
現場に駆けつけた目暮警部がそう言った。ドクターが駆けつけた時にはもう手遅れだったのだ。
「それで?亡くなったのは……」
「杯戸町在住の須東伶菜さん42歳……。今日は高校時代の同級生である高坂樹理さんを見舞うために……同じく同級生の友人2人とこの病院を訪れたみたいです……」
須東さんだけは友人2人よりも早めに着いたそうだ。
死因は青酸系の毒物による窒息死。
入院患者の高坂さんが紅茶好きで、4人で集まる時はいつもお茶会を開いていたのだという。
また、3人の話だと被害者はそれまで平気で何杯か飲んでいたのに、急に苦しみ出したとか。
と、いきなりコナン君はお得意の──
「あれれ〜おっかしいよー!」←
コナン君はわざとらしい子供のフリをして、みんなの注目を集めた。彼の手には現場に落ちていた携帯がある。
「どうしたのコナン君?」
「だってホラ、ここに落ちてた携帯電話に色々写真入ってたけど……亡くなったおばさん、右手にお箸持ってるよ!」
「でもこれのどこが……あ!」
私は写真と床に落ちて割れているカップを見比べ、ハッと気づいた。
「ど、どうしたんだね瀬里奈君?」
「警部……。この落ちてるカップ……取っ手の右の方に口紅が付いてますよね?これって左手で紅茶を飲んでた証拠じゃないですか?」
そう言うと、目暮警部と小五郎さんが納得したように頷いた。
「でも何で被害者は左手に……」新たな謎が1つ増え、小五郎さんは頭を抱えた。
「右手が何かでふさがっていたからですよ……。例えば携帯電話の写真を見ていたとか……」
人は何かに夢中になると、他のことにまで気が回らなくなる。たとえカップの位置が違っていたり取っ手の向きが変えられていたとしても気づかずに取ってしまう。
「そっか、その心理を利用して、犯人は被害者に毒を飲ませたんだわ!毒を入れた自分のカップと被害者のカップをすり替えて……」
「す、すり替えた?」
高木刑事が驚いたように言った。
「ええ……。気づかれずに被害者のカップに毒を入れるより、自分のカップに毒を入れてすり替える方がローリスク……。皆さんカップの受け皿を使ってなかったようなので……カップの位置をズラしやすいですし……。ですよね?毛利先生!」
安室さんはパッと小五郎さんに笑いかけた。
本当、よくやるわ。