第23章 服部平次と吸血鬼館
(……って、そんなのあるかってーの)
私ははぁ、とため息をついた。
でも可能性はゼロではない……か。
例えば、もしあれが旦那様じゃなくて、旦那様の形をした“何か”だとしたら──それを隠すための通路とかもありそうなものだけど……。
例えば、棺桶の底に引き戸があって……棺桶の下の床にも同じ引き戸と、それから延びる通路があったら……隠せそうだけどなぁ。
「でも、そのまま下にあったらバレちゃうか……絨毯とかで隠してたとか?」
「何ブツブツ言うてるん?早よ餃子作ろ!」
「あ、うん……。まずは皮作りね?あと、ニンニクの調達」
和葉ちゃんに呼ばれ、私は久々の料理に少しだけ気合が入った。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
ドォン、という大きな音が聞こえた。いや、ここでは微かに、か。
「……?」
「どうしました?」
蘭ちゃんに訊かれ、私は首を横に振った。
「あ、ううん、何でもない……」
私がそう言うと、和葉ちゃんが銀の食器を使って何やら作りながら言った。
「アタシらニンニク探しに行って来るさかい、他の材料の準備頼んでもええ?」
「いいよ、やっておくから……。気を付けてね〜!」
手を振って2人を見送る。「さて、と……」私はポアロでのバイト時の様に高い位置でポニーテールにし、下準備を始めた。
テキパキと下準備をしていると、平次君とコナン君が厨房にやって来た。
「あれ、どうしたの2人共……。餃子ならまだ出来てもないけど……」
「いや、餃子やのーて写真を……」
「写真?」
私は平次君達に写真を見せてもらった。例の集合写真だ。
「どや?この通りに写ってたか?」
「ええ……確かにこんな感じだった」
私はこくりと頷いた。コナン君が私に尋ねる。
「他のシェフさん達は?」
「ん?あー、シェフさん達なら……」
「この時間なら、皆さん別室でまかないを食べてる頃かと……」
2人の後ろにいたひかるさんがそう言った。途端に彼女の腹の虫が鳴く。
「あ、ホントは私達メイドも一緒に食べるんですけど……旦那様探して食べそびれちゃって……」
ひかるさんは恥ずかしそうにそう言った。