第23章 服部平次と吸血鬼館
私は蘭ちゃん達と一緒に、皆さんが並んでいる所をカメラ越しに覗き込んでいる岸治さんの後ろに立った。
実那さんと瑠莉さんが真ん中の椅子を空けてそれぞれ向かって左と右に。瑠莉さんの斜め左後ろに麻信さん、その右に羽川さん、そのまた隣には守与さんだ。恐らく守与さんの右隣に岸治さんが収まるのだろう。
守与さんは羽川さんと自分の間にある壁掛けの鏡を覗き込み、髪をいじっている。
「じゃあ俺が向こう側に並んだら……このシャッターボタンを押してくれ!」
「あ、はい!じゃあ皆さん撮りますよー?はい、チー……!?」
私はシャッターを押すと同時に声を詰まらせた。
だって、今、みんなの後ろに──
「い、今、みんなの後ろに……」
「さ、さっき棺桶の中で寝てたおっちゃんが!」
蘭ちゃんと和葉ちゃんが言う。
「どこにいるの?」コナン君が不思議そうに言った。
「さ……さっきはいたのよ!羽川さんと守代さんの間に……青白い顔で幽霊みたいにフワーッと……」
私がそう言うと、和葉ちゃんと蘭ちゃんもこくこくと頷いた。
「ちょっとあなた達!いい加減にしてくれる!?」
瑠莉さんがついにキレた。
「どーせ吸血鬼騒ぎを聞きつけて、あの探偵さん達にくっついて来たんでしょうけど……。お化け屋敷感覚でありもしない物を見た気になってギャーギャー喚かないでよ!」
『吸血鬼騒ぎ』を知らない蘭ちゃん達はきょとんとする。「まさか知らないの?」と実那さんが言う。
「半年前にこの館のそばの森の中で……ここでメイドをやってた清水さんが遺体で発見されたのよ……。全身の血を抜かれ……地面に立てた杭に逆さに縛られた状態でね……」
怖い顔で言った。
「おまけに遺体の首に穴が2つ開いてたから、大騒ぎしてんのさ……」
「吸血鬼が出たってね……」
ニタニタと笑う羽川さんと守与さん。困ったように目を細めて言うのは麻信さんだ。
「その上兄さんが、最近陽のある内は棺桶の中で寝てたり、銀やニンニクを嫌ったりするもんだから妙な噂が立ってね……」
「とにかく兄貴を手分けして捜そうぜ?このままじゃ兄貴……マジで化け物にされかねねぇからよ……」
それを聞いた蘭ちゃんと和葉ちゃんは、どこかへ猛ダッシュで向かった。
「ちょっ、どこ行くの!?」