第22章 怪盗キッドと赤面の人魚(ブラッシュマーメイド)
それを聞いていたコナン君は何かに気づいたように鈴木相談役に何かを尋ねていた。
「ええい、撤収じゃ撤収!」
鈴木相談役が痺れを切らしたようにそう言った。
「水槽の中を隈なく探しても見つからず……ここにいる全員のボディチェックを済ませたのに誰も持っていなかったということは……あの宝石を背負った亀は、怪盗キッドによってこの博物館の外に持ち出されてしまったのは明白な事実!もなや警察がここに留まる理由はありはせんわ!」
鈴木相談役はどうしても撤収したいらしい。
何か理由があるようにしか思えないが──
「瀬里奈……」
「ん?何?」
「探偵役……頼んでもいいか?」
「え?私、今回は謎解きしてないわよ?」
コナン君に頼まれ、私はきょとんとした。
「オレの推理を教えるから、とりあえずその通りに喋ってくれよ……」コナン君にそう言われ、私は大きくため息をついた。
「分かったわよ……。その代わりこれ1回きりね?いい?」
「助かる!悪ィな……」
そして私はコナン君から推理を聞き、またため息を1つついた。
「もう夜の10時過ぎだから、とりあえず捜査は日を改めてってことで……」
小五郎さんがそう言った時、私は最大限の演技力でそれを止めに入った。
「え、帰っちゃうんですか?せっかくキッドが宝石を盗んだ手口が分かったのに……」
「え!?」
みんなが私の方へ視線を向ける。
「赤いダイヤ、ブラッシュマーメイドを背負った亀は……正確には盗まれたんじゃない……。ただ単にみんなの視界から消えただけなんですよ……」
「し、視界から消えただと?」
中森のおじ様が驚いたように言う。
「ええ、その証拠もちゃんとあります……。
──小五郎さん、ライター持ってますよね?」
「ああ……。百円ライターだが……」
「じゃあ、そのライターをこの真上から水槽の中に落として見てください……」
小五郎さんは言われた通りに水槽の中に落とした。だが、ライターは落っこちて来ない。どうなっているのか、と小五郎さんが脚立に乗って上から覗いた。
「く、くっついてる……。何で?」
世良さんがニヤ、と笑って言った。
「そのプレートが強力な磁石になっているんだよ!手品師がよく磁石の指輪で瓶の内側に鉄のコインを吸い付けて隠すのと同じさ!そのタイプの百円ライターも点火部分が鉄で囲われてるからな……」