第21章 密室にいるコナン、謎解きするバーボン
「でも大量の氷を何かに入れて運べば、誰かが気づくんじゃねーか?」
と、安室さんが反論した。
「手ブラでも運べますよ……。冷やし中華を作っていた時、3人共テニスウェアのままでしたから……」
私はぽんっと手を叩く。
「そっか、男性用のテニスウェアのズボンはボールが入れられるようにポケットが大きめだし……女性のテニスウェアも、ボールポケット付きのは売ってるし……」
私がそう言うと、小五郎さんが困ったように言った。
「で、でもよぉ瀬里奈ちゃん……。たとえ花瓶を自動的に落とせたとしても……遺体を扉のそばには運べねェだろ?床に引きずったような跡もなかったし……」
そこでコナン君がまたヒントを出してくれる。
「そういえば氷ってさー……ツルツル滑るよね?」
そのヒントで園子ちゃんがハッと閃いたような顔をした。
「そっか!私分かっちゃった!ホラ、遺体のお尻の下にラケットがあったんでしょ?そのラケットの下に氷を敷いて、遺体を滑らせて動かしたのよ!ラケットのガットが数ヶ所歪んでたのがその証拠よ!」
「し、しかしそうだとすると……」
横溝警部が待ったをかける。
園子ちゃんの話だと、花瓶のように氷が溶けた水が床に残っているはずだし、遺体のズボンも濡れているはずだが──そんな痕跡はなかったらしい。
「溶けても何も残んない氷みたいなのがあればよかったのにね!」
コナン君が蘭ちゃんにそう言う。蘭ちゃんはきょとんとしながら言った。
「それってもしかして……ドライアイスのこと?ドライアイスの成分は二酸化炭素だから消えてなくなるし……」
だが、ドライアイスは直接は触れない。そこで犯人は石栗さんに運ばせたのだ。
石栗さんがお昼代わりに食べる予定だったアイスケーキの箱の中には、ドライアイスが数個入っていただろうから。
「恐らく犯人は石栗さんを花瓶で撲殺した後、数個のドライアイスの上にラケット被せて、さらにその上に遺体の尻を載せ……あらかじめラケットのフレームに通して置いた紐を部屋から出た後に引っ張り、遺体を扉に寄せたんでしょう……もちろん紐は後で回収できるように結ばずにね……」
元々扉のそばで殴り倒しておけば、自分が部屋の外に出られる扉の隙間分だけ遺体をズラすだけで済む。
「そっか、だからあの時足元がひんやりしてたんだ……ドライアイスが足元にあったから……」