第21章 密室にいるコナン、謎解きするバーボン
3人目、高梨昇さん。
「ああ、俺も行ったよ……石栗に謝りに……。昼飯前にちょっとやり合っちまったから……悪かったなって……」
「それ、真知さんのシャワーの前か後か分かりますか?」
「真知がいつシャワーを浴びたかなんて知らねーけど……食事の片付けをしてゴミを出す前だよ……。返事がなかったから怒ってシカトしてるんだと思ったけど……」
高梨さんが少し声のトーンを落として目を伏せると、安室さんが問いかけた。
「そういえばその喧嘩……亡くなったサークル仲間が原因ですよね?」
「ああ……。今年の冬、瓜生って奴が死んだんだ……。サークルの仲間でスキーに行ったロッジの裏で雪に埋もれてな……」
その時、ロッジの周りには新雪が2m近く積もっていたらしく、「これならロッジの2階から飛び降りても死なない」という石栗さんの冗談を瓜生さんが真に受けて飛び降りたのだろう──という話だ。
「昨日がその瓜生の誕生日だったから、みんなで集まって祝ってやったんだ……。去年、ひどい誕生日にしちまって……今年はちゃんとみんなで祝うって約束してたからな……」
去年の今頃も、この別荘にサークル仲間で集まったのだが、石栗さんが「ちょうど瓜生の誕生日だから驚かせてやろう」と言い出したらしい。
瓜生さんが寝てる部屋にベランダ伝いに窓から忍び込み、0時になった瞬間に瓜生さんの耳元でクラッカーを鳴らしたら……瓜生さんはビビり過ぎて泣きじゃくってしまった。その上、石栗さんにその様子をムービーに撮られてネットに流され、彼はかなり落ち込んでいたとか。
「なるほど……あなた方3人には石栗さんを殺す動機は……充分にありそうですなぁ……」
小五郎さんがそう言う。
高梨さんがそれに勢いよく噛み付いた。
「動機って……俺が石栗の部屋に行ったのはそれ一度きりで……後はずっとあんたらの中の誰かと一緒にいたじゃねーか!探偵さんの話にも付き合ったしよ!」
それに、コナン君に「リビングはクーラーの調子が悪いから、石栗の部屋にでも行って横になってな」と言ったのも高梨さんらしい。部屋で子供が寝ているのに人を殺すのは難しそうだ。