第20章 漆黒の特急──ミステリートレイン
私は8号車のD室で、住友さんと小蓑さんと話をしていた。
「それにしても、どうやって小蓑さんの声を出してるんですか?」
私は小蓑さん──じいやさんにそう尋ねた。住友さんが快斗の声で答える。
「オレが腹話術で小蓑さんの声を出してるんだよ!それをじいちゃんが口パクで合わせてんだ……」
「腹話術?あんたどんどん芸が増えてくわね……」
私ははぁー、とため息をつきそうになった。
快斗は苦笑いしてそれを流す。
そして2人は廊下の幅や長さを測るために外へ出て行った。
私も部屋にいる用がなくなったので外へ出る。
「でも……私もあの部屋だからなぁ」
そう考えてながら歩いていると、世良さんが前を歩いていた。
「世良さん?」
「ん?あんた……工藤君のお姉さんか!」
「ええ、工藤瀬里奈。名乗ってなかったっけ?」
私が小首を傾げると、世良さんは「うーん……」と唸っていた。
「分かんないか。私も覚えてない」
「覚えてないのかよ!?」
世良さんにツッコまれる。私はあははっと笑ってごまかした。
「ところで、どこ行くの?」
「ん?ああ、蘭君達の部屋に行こうかな、と……。ボクは1人部屋だから暇だしね」
「あー、なるほどね……」
私は小さくしきりに頷いた。
「そーゆーあんたはどこ行くつもりなんだ?」
「私?決まってない」
あっさり言うと、世良さんはポカンとした顔になった。
「決まってないって……」
「だって、私と同室だった人2人が外出ちゃったから……暇になってさ?世良さんが蘭ちゃんトコに行くなら行こうかな……。楽しそうだし」
「女子高生にオバさん混じっていいのか?」
「なっ!?」
予想していたよりも斜め上から言葉が飛んで来たため、私はぎょっとしてしまった。
「ちょっと!私まだ20歳だからね!?失礼だよ世良さん!」
「悪い悪い、ちょっとからかっただけだって!」
「もぉ、世良さんのバカ!」
私はニヤニヤしている世良さんをグーで殴る。
そうこうしている内に蘭ちゃん達のいる8号車のB室に着いた。と、なぜか室橋さんが蘭ちゃん達の部屋で何かを話している。
「蘭ちゃん、園子ちゃん?」
「えっ?あ、お姉さん!世良さんも……」
「どうしたの、あのオジさんと何かあった?」
そう訊くと、蘭ちゃんはある一枚のカードを見せて来た。
「実は……」