第20章 漆黒の特急──ミステリートレイン
「車掌さん……何年我々と顔を突き合わせているんだね?」
「そんなの今日どの列車に運転時刻の変更があるかを調べれば察しはつくんじゃなくて?」
男の人は能登泰策さん、女の人は出波茉利さん。能登さんは8号車のA室の乗客、出波さんは8号車のE室の乗客だ。
そして隣にいた小蓑さんが話に加わる。
「我々の知的興奮の矛先は……車中で生じるミステリーのみ……。ですわよね?住友さん……」
「はい、奥様……」
そんな彼らに、車掌さんは「おみそれしました!」と感嘆の声を上げていた。
と、顎髭を生やした太った男の人が声を荒げた。
「おい!! どーなってんだ!?俺は確かに1等車であるこの8号車のいつもの部屋を予約したのに……何で7号車に変わってんだよ!?」
太った男の人は室橋悦人さん。7号車のB室乗客。
どうやら予約がダブルブッキングしてしまったらしく、室橋さんの部屋を変更する、と連絡を入れていたらしい。
「どこのどいつだ!?割り込んで来やがったのは!?」
「ここのコイツですよ……」
「え?」
私もその声に振り向いた。──私の思った通りの人だった。
「いやぁ、すみませんねぇ……。ウチの娘がこの列車のオーナーの友人でして……」
その人は自分のチョビヒゲを手直ししながらそう言う。
「まぁ私が乗るからにはご安心あれ……。この列車内でいかなる事件が起きようと……この名探偵毛利ポア郎が……立ち所に解き明かして御覧に入れますから!」
やだ何この人。私知らない←
だが、小五郎さんのその言葉に、その場にいた6人の表情が変わった。
そこへ蘭ちゃんとコナン君が駆けて来る。
「あら、蘭ちゃん?」
「お姉さん!すいません、父が……」
「いーえ、私は構わないけど。大変ね、自由な親だとお互い……」
「確かに……。ホーラ!6号車の前で探偵団の子供達待ってるよ!出発前にみんなで写真撮ろうって!お姉さんも行きましょ!」
「え?何で私まで……きゃっ!」
私はコナン君に手を引かれてみんなの所へ向かった。
なぜか私も入って一緒に写真を撮り、ベルツリー急行は出発した。