第18章 3人の容疑者──bourbon
目の前にいるのは、コナン君と見知らぬ男。なのに、私はその男を見た瞬間、『赤井さんだ』と確信した。
「……とりあえず、上がって?話が聞きたいから……」
そう言って2人を家に上げる。
リビングに通し、青年には紅茶、コナン君にはアイスコーヒーを出した。
「はい、どうぞ」
「ありがとう瀬里奈姉ちゃん!」
子供の声でそう話すコナン君に、私は小さく苦笑した。
「……で?まずは“彼”の名前を聞きたいんだけど」
そう言いつつ私が“彼”に視線を送ると、眼鏡の青年が話し始めた。
「初めまして、沖矢昴です……。実は住んでいたアパートが燃えてしまいまして……困っていたら、このコナン君が……」
「ここの家に住めば?って言ったんだ!瀬里奈姉ちゃん1人だと物騒だし、男の人がいれば安心だしね!」
話を聞いていた私は、ふう、と小さく息を吐いた。
「なるほど……それでここに来たってわけね?じゃあ次。昴さんは一体誰なの?」
率直に聞いた。
どう考えても、コナン君が初見で信頼するほどの何かを持っているとは思えない。それに、一緒に住むのなら正体を知っておくべきだ──そう考えたのだ。
「……やはり騙せないか」
昴さんはため息をつき、私をまっすぐ見つめた。
それはまるで心の奥底まで見透かされるような視線。
「もう察してるとは思うが、俺は赤井秀一だ。全てはこのボウヤと俺、キールとの共同作戦だ……」
「ま、待って!共同作戦ってことは……来葉峠で赤井さんが死んだっていうのはトリックってこと?」
「そうなるな。まあ詳しいことはあまり話せないが……」
そう言われ、私はまた1つため息をついた。
「……分かった、とりあえず信じるわ。赤井さんのことを知っているのはあと誰なの?」
「有希子おばさんと優作おじさん、ボク、阿笠博士、水無怜奈さん、瀬里奈姉ちゃん、昴さんの7人だよ!」
それを聞いた私ははた、と思った。
「じゃあ……顔はお母さんの変装術?声は阿笠博士の変声機ってこと?」
そう尋ねると、コナンはこくこくと頷いた。
「有希子おばさんはたまの週末に赤井さんの変装チェックに来るからさ……」
「Oh……」
──マジか。あのテンション高い人来るの?←