第18章 3人の容疑者──bourbon
──お昼時。
いつもはゆるいポアロも、この時間になるとかなり慌ただしくなる。
そんな中で一際よく働く(らしい)私の手を掴んでいる男性が1人。
「……離してください、仕事できません」
「君が『うん』というまで離さない!(キリッ」
私の怒りの沸点は最高潮に達しようとしていた。
「だーかーらー、私は芸能界に入る気は無いって……」
「いや、その透き通った声、美しい容姿!それさえあれば生きていけるさ!」
「私は目立つことは嫌いなの!分かったら出てって下さい〜!」
「僕は君を選んだんだ!君に拒否権はない!」
それはお昼のピークを過ぎても続き、最終的に折れたのは──
「……分かりました」
私はため息をついてそう言った。
男の名は坂城というらしく、「明日にでも事務所に来てくれ。契約のこともあるから……」と実に事務的なことを言い残してポアロを去った。
「……はぁ〜あ……」
「お疲れ様です、瀬里奈さん」
梓さんに苦笑いで労われる。私も苦笑いで返した。
「芸能界ってしつこい人ばかりなのかなぁ……」
「そんなことないと思いますよ?ホラ、瀬里奈さん美人だからTV映えするとかそんな感じなんじゃ……」
「美人って……」
梓さんの言葉に、私は唖然とした。一体自分のどこが美人だというのか。
「まぁ、今日の所は帰っても大丈夫ですよ」
「え、でもまだ時間あるし……」
「顔色!心なしか青白いですよ?今日は早く帰ってゆっくり休むこと!いいですね?」
「は、はい……」
──梓さんに押し切られ、私は少し早めの帰路に着いた。
家に帰り、着替えをしてからソファに沈む。と、玄関のチャイムが鳴った。
「はぁーい……」
昼間のあの攻撃のせいでだるい体に鞭を打って玄関を開ける。と──
「……え」
私はドアを開けたまま固まった。
外にいたのはコナン君と、もう1人──眼鏡をかけた茶髪の青年。
「赤井……さん……?」