第16章 映画編・迷宮の十字路 〜後編〜
──瀬里奈side
京都駅。
「はい、次は歩美ちゃんどうぞ……」
「わぁ〜!可愛い〜」
ホームでは子供達がシマリスを交代で触っていた。
「連れて帰っちゃおうかな〜……」
「あきまへん……」
歩美ちゃんの言葉にぬっと顔を出したのは綾小路警部。「一番の親友なんやから」と豪語していた。
だが──
「警部さんもしかして、人間のお友達少ないの?」
歩美ちゃんにそう切られ、綾小路警部は目を点にさせた。
小五郎さんが「犯人呼ばわりしてすみませんでした……」とその場にいた千賀鈴さんと綾小路警部に謝る。
「よろしおす。ホンマはうち、父親が誰か知ってて、うちの方から『もうお金は送らんでええ』って言うたんどす……」
「ち、父親って……」
「誰ですか!?」
小五郎さんと白鳥警部がぎょっとして訊く。千賀鈴さんはにっこり笑って「内緒どす♪」と言ったが──両手を合掌していた。
その仕草で分かったのか、小五郎さん、白鳥警部、綾小路警部の3人は怒りで肩を震わせていた。
「あのクソ坊主〜……!!!」
そんな風に大人達が騒いでいる中、蘭ちゃんと園子ちゃん、私、和葉ちゃん、平次ちゃん、コナン君の6人が立ち話をしていた。
「まるたけえびすにおしおいけ
よめさんろっかくたこにしき……」
和葉ちゃんがそう口ずさんでいるのに、私は小さく苦笑した。
「“よめさん”じゃなくて“あねさん”だよ、和葉ちゃん」
そう言うと、和葉ちゃんは少しきょとんとした表情になる。
「そやそや。お前、その歌どこで覚えてん」平次君も同調し、彼女に問うた。
「京都の親戚の家やけど?小学校3年生の時やったかなぁ……?あんたと遊びに行った時に教えてもろた」
「オレと?」
「何や、覚えてへんの?……そか、アタシの支度が出来るのが待ちきれんかって、あんた山能寺の方へ遊びに行くゆーて出てってしもたもんなー……」
その時、和葉ちゃんは着物を着せてもらっており、髪も結ってもらって化粧もしていたらしい。
そして平次君を捜しに山能寺まで行ったが、どこにもいなかったからしばらく鞠をついてから帰ったらしい。
「ホンマ、あんたにも見せたかったわ〜。桜の花が舞っとって、めっちゃ綺麗やってんで〜!?」
和葉ちゃんはうっとりした表情で言った。
それを聞いた平次君が何かに気づいたような顔をする。