第16章 映画編・迷宮の十字路 〜後編〜
「和葉姉ちゃん!……って、瀬里奈姉ちゃんどうしたの!?」
コナン君が驚いたように私を見てくる。
「いや……ちょっとしくじってね……西条にやられちゃったの」
小さく笑うと、コナン君は軽くため息をついた。そして山門に寄りかからせるようにして座らせる。
「取り敢えずここに座ってて。──和葉姉ちゃん、平次兄ちゃんは!?」
「えっ……」
和葉ちゃんが少し口ごもる。と、平次君と西条が寺の屋根に現れた。
「あそこ!!」
「!」
そこへ気絶していたはずの弟子達が立ち上がり、2人を取り囲む。
腹部を抑えながらうずくまっていた私も、弟子の1人に腕を掴まれて刀を首筋に当てられる。
「!? 瀬里奈姉ちゃん!」
「瀬里奈さん!」
2人が驚いているのをよそに私は痛む身体に鞭を打ち、自分を捕まえている男の股間を蹴った。
「「!!?」」
和葉ちゃんとコナン君が驚いているのを横目に、私は2人の所に駆け込んで座り込む。
「し……しばらくは再起不能の……ハズ……。た、ただ……力入んなくて……あの人の復活早いかも……」
喉元を腕で拘束されていたため、酸素が行き渡っていない。私はケホケホっと涙目になりながら咳をした。
そのことに少し慄いていたらしい弟子達は、気を取り直したのかすぐにこちらを向いた。
せめて外にこのことを知らせたいが、携帯は圏外。声なんて届く範囲はたかが知れている。どうする──?
「……コナン君!あれ!松明!」
私はパッと松明を指差した。
コナン君は松明を山門付近にあった廃材に向けて投げた。コナン君が投げた“それ”はクリーンヒットし、周りの木も巻き込んで燃え始めた。
「おい!すぐに消すんや!」
「お、おぉ!」
誰かの指示で2人ほど消火をしにどこかへ消えた。
この火に誰か気づいてくれれば……!