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白い雪【名探偵コナン】

第3章 ゴールデンアップル


パシャパシャと雨の中を走っていると、──「赤井さん!?」懐かしい人に遭遇した。
赤井さんも私と会ったのは想定外だったようで、「君は……」と驚いたような顔をした。

「お久しぶりです赤井さん。瀬里奈です」

そういえば名乗っていなかった、と今更思い出して名乗ってみる。彼は相変わらずの長髪で、そばには部下らしき人を連れていた。

「仕事ですか?」
「ああ。君はどうしてここに?」
「家族で旅行に来てたんですけど……私は先に帰るつもりだったんです」
「つもり、とは?」
「お恥ずかしい話、道に迷っちゃって……」

えへへ、と照れ笑いすると、赤井さんは何を思ったか私の腕を引っ掴んだ。

「えっ、」
「ここを右に行けば大通りに出るから、そこでタクシーでも拾え」

そんな近いのか。私は愕然とした。ここに来て自身の方向音痴を思い知らされた形だ。

「そんな近かったんだ……」
「方向音痴か」
「仰るとおりで……」

私は赤井さんに頭を下げた。

「ありがとうございます。おかげさまで無事帰れそうです」

と、そこで携帯のバイブレーションが鳴った。
液晶を見ると『新一』と出ていた。通話ボタンを押して電話に出る。

「あ、もしもし新一?」
『オメー今どこだよ!?先に戻ってるっつってたのにいねーし!何回も連絡したんだからな!?』
「ご、ごめん……。道に迷っちゃってさ……今から帰るから」

うん、うん、と新一の小言を聞き流し、タクシーで帰る旨を伝えてから電話を切った。

「じゃあ……ありがとうございました」
「気をつけろ。──ああそうだ」
「?」
「銀髪の日本人を見なかったか?」

銀髪の日本人。そう訊かれて私は思い当たる節があった。先ほど手当てしていたあの男のことである。彼も銀髪ではなかっただろうか。
だが私はそれを赤井さんに言うことはしなかった。

そして、それはのちに私の運命を大きく変えることとなる──

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