第15章 映画編・迷宮の十字路 〜前編〜
──第三者side
その頃、コナンは義経と弁慶が戦ったという五条大橋に来ていた。周りをきょろきょろと見回すが、謎の絵に関係ありそうなものはない。
そんな彼に、足音を消して忍び寄る1つの影。
「京の五条の橋の上……大の男の弁慶は……長い薙刀振り上げて……」
ハッとコナンが振り向く。
その影は手にしていた竹刀をコナンめがけて振り下ろした。
「牛若丸めがけて斬りかかる!!」
その竹刀を間一髪で避けるコナン。そしてすぐにその影の正体に気づいた。
「はっ、服部!」
平次はニヤッと笑い、肩に竹刀を乗せた。
「お前とここで会うとは、神さんも洒落たことしてくれるやんけ」
そんな彼を追って来たのか、道着姿の子供達が数名、駆けて来た。
どうやら平次はこの子供達に竹刀を借りてまで、こんな茶番を仕掛けたらしい。
「竹刀なんか借りるなよな……」
呆れ声のコナンに構わず、平次は
「こんな所で何してんねん」
と話を変えた。だが、
「お前こそ何やってんだよ」
コナンに逆に問い返され、平次は場所を変えた。
実は、大阪で殺されたたこ焼き屋の店主は平次の顔馴染みだったそうだ。
中学の時から世話になっていたらしく、犯人を挙げて仇を取ってやろうと考えているらしい。
「それで京都に来て、犯人の手がかりを探してたってわけか……」
コナンは軽くため息をついた。そして平次の方を見上げる。
「だったら、いいもんがあるぜ」
「?」
コナンは竜円から預かったあの絵のコピーを平次に見せた。それを見た平次はしゃがみ込んで「なるほど……」と顎に手を添えた。彼が考え事をする時の癖である。
「この絵の謎を解いたら、仏像だけやのーて殺しの犯人にも繋がるかもしれんな……。……そんでお前……!!」
「ああ。仏像を盗んだのが『源氏蛍』なら、義経や弁慶に関係する場所を回れば謎を解く手がかりが掴めっかなーっと思ったけど……京都はサッパリ分かんねぇ……」
コナンはお手上げというような半眼で平次を見た。すると平次は不敵に笑った。
「ほんならこの先は任せとけ。オレが案内したる」