第3章 ゴールデンアップル
スコッチさんの自殺から1年が経った。
両親はこの頃にはもうアメリカに移り住んでおり、家には新一と私だけだった。そしてその頃──
「え?アメリカ?」
その知らせは急にきた。
『そう!アメリカ!ブロードウェイの舞台観に行きましょ!』
電話の相手はお母さん。いつもいつも急で自由なこの両親にはほとほと呆れるが、もう何年も暮らしていれば慣れてしまった。
「アメリカはいいけど……なんで舞台?」
『2人に会わせたい人がいるのよ!ね、蘭ちゃんも誘っていらっしゃいよ!チケットはもう送ってあるから!』
一方的に言うだけ言って電話は切れた。その場にいた新一が怪訝な顔をする。
「母さんなんだって?」
「アメリカ来いって。ブロードウェイの舞台観に行こうってさ」
「あの人いつも急なんだよなぁ……」
「分かってるなら止めなさいよ」
「出来るかバーロォ」
新一と他愛もない話をしているうちに、私は毛利探偵事務所に電話をかけた。
蘭ちゃんは了承してくれたが、小五郎さんは町内会に行っているそうなので、内緒で3人でロスへ向かった。
だが日本からLAへ行く飛行機の中、新一がいるということは何事もなく済むなんてことはなく……。
「……私が寝てる間に殺人事件起きてたってわけね?」
「ああ。オメーが寝てっから捜査の邪魔だったよ」
「何にも知らない高校生が現場踏み荒らす方が迷惑だと思うけど」
ジト目で文句を言う新一に、これまたジト目で返す私。その様子を見ておろおろしている蘭ちゃん。
ここはLAからN・Yへ向かう飛行機の中。
新一と蘭ちゃんから聞いた所によると、日本からLAに向かう飛行機の中で殺人事件が起きたらしい(その頃私は爆睡していたため何も知らない)。
「でも急すぎるわよねお母さんも。いきなりLAからN・Yに来いなんて。蘭ちゃんもバタバタしちゃってゴメンね」
「いえ!全然大丈夫です、ミュージカル楽しみだし!」
蘭ちゃんのいい子っぷりに癒される私。いつの間にか新一は爆睡していた。