第11章 揺れる警視庁1200万人の人質
阿笠博士のビートルの車内。
「しかしよく止められたもんじゃ……コードを切る時間は3秒もなかったんじゃろ?」
ハンドルを握る博士が訊いた。助手席に座っているコナンが答える。
「まあ元々ヒントの途中で分かったらすぐに切るつもりでペンチ握ってたんだ……。高木刑事を死なせるわけにはいかなかったし……」
コナンと同じく助手席に座っている灰原が口を挟む。
「でもさすがね……EVITだけで、ディティクティヴの綴りだと分かるなんて……」
「まったくじゃ!」
博士が嬉しそうに同調した。コナンは博士をちらりと見上げる。
(バーロ……分かるに決まってんだろ……心の中でそこじゃなきゃいいって、ずーっと思い続けていたんだからよ……)
蘭の所じゃなければ、と──
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
──瀬里奈side
警察病院。
「……あの、すみません。手波桂羅の見舞いの者ですが……」
「ああ、工藤瀬里奈さんですね?少々お待ち下さい」
2、3分待ってから出てきたのは、警察病院の院長。私は座っていた椅子から立ち上がって会釈した。
「こんにちは、院長。お忙しい中すみません」
「いえ、あなたの頼みとなれば、受けないわけにはいきませんからね」
院長は笑ってそう言ってくれた。
「桂羅君は、まだ目を覚ましませんか?」
院長に訊かれ、私はこくりと頷いた。
「はい……いつ目を覚ますか分からないって──」
「ええ」
「無理にでも目を覚まさせることは出来ないんですか?」
縋るように私は院長を見る。だが院長は首を横に振った。
「出来なくはないのですが……そうした後の、彼の体が心配ですね。かなり危険な状態に陥る可能性がありますから……」
「そう、ですか……」
私はしゅんと沈む。毎日のように行われる検査を終え、病室には私と、ベッドに横たわる20代後半くらいの青年だけ。
「桂羅兄……今日ね、爆弾事件があったのよ。爆弾を解体したのは私の遠い親戚の子。江戸川コナン君っていうのよ。すごいでしょ?」
他愛もない近況報告。聞こえているかも分からないのに。
お願い……目を覚まして。
もう一度だけでいい。私のことは憎いままでいいから……
もう一度──