第11章 揺れる警視庁1200万人の人質
カツラとサングラスを外したその女性は……
「……あれ、佐藤刑事?」
「あら、瀬里奈ちゃん……どうしたのこんな所で。今日は行かなかったの?」
私もよく知る刑事さんだった。佐藤美和子警部補、私が仲良くさせてもらっている女刑事さんだ。ショートカットがよく似合う女性で、腕っ節は強いし、美人でサバサバした性格だしで、警視庁のみならず他の県警の人間にも好かれているらしい。
「いえ、これから行こうかと思ってて……佐藤刑事こそ何でここに?」
「ええ、まぁちょっとわけがあってね」
「わけ?」
私はきょとんと首を傾げるが、佐藤刑事が答えるより前にコナン君によって遮られた。
「ねぇ……瀬里奈姉ちゃんと佐藤刑事って知り合いなの?」
コナン君に訊かれ、私は困ったように頷いた。
「ええ……ちょっと色々あってね。親しくさせて頂いてるの」
「色々って?」
「コナン君、瀬里奈ちゃんには“オトナの事情”って物があるのよ。あまり深く詮索しないであげて」
コナン君にさらに訊かれそうになったが、その場は佐藤刑事の助け舟で何とか凌げた。
(ありがとうございます……)
(あなたがみんなに話していないことを、私が話すわけにはいかないからね)
私が小さく拝むと、佐藤刑事はそう言わんばかりに軽くウインクした。
「じゃあ私はこれで……失礼しますね」
そう言って私はみんなの元を去ろうとするが、交通部の宮本由美さんや白鳥警部が現場に到着し、私は帰るに帰れなくなった。
「おや、そこのお嬢さんは初めましてですね、白鳥任三郎と申します」
生真面目に頭を下げられ、私も慌てて頭をぺこりと下げた。
「は、初めまして!工藤瀬里奈と申します!いつも子供達やコナン君がお世話になってます」
「しっかりしたお姉さんですね」
白鳥警部に言われ、私は軽く笑った。
「手のかかる弟がいたものですから。でもこんなに捜査一課の刑事さん達が集まってどうしたんです?変装までしてるし……何か事件でも?」
先程コナン君に邪魔されて訊けなかったことを白鳥警部に訊いてみる。
すると白鳥警部はこう答えた。
「ついさっき本庁に妙なFAXが送られてきたんですよ!『今日行われる東京スピリッツ優勝パレードで面白い事が起こる』とね……」