第10章 シカゴから来た男──P&A
バスジャックの時間から数日経った。
私は情報収集のノウハウをキュラソーに教わり、彼女から「これならどこに出しても平気だと思う」と言ってもらうことが出来た。
『そう。ボスに報告はしたのかしら?』
私は家で電話報告をしていた。相手はベルモットだ。
「一応したわ。ボスは『ベルモットに報告しなさい』って仰ってた」
『あらそう。じゃあそろそろいいかしらね……』
ベルモットはそう言うと、一方的に電話を切った。いつものことだが、呆れ果てた私は大きくため息をつく。
「……それにしても、さぁ……」
私は困ったように呟いた。
「安室さんと仕事かぁ〜……」
がくりと頭を下げる。
いくら組織の仕事とはいえ、公安の人と関わりを持つのはあまりいただけない。そうでなくとも諜報機関は嫌いなのに。
「まぁ、警察関係にコネクションがあるってことは報告済みだし……殺される心配はないけど」
私が警察関係の人と交友関係にあること、そしてそれは情報収集をするのにおいて重要なコネであることは既に“あの方”に報告済みである(あまりいい顔はしなかったが)。
「あ、そうだ……」
私は家に届いていたチラシの1つを手に取った。内容は『ポール&アニーのアニマルショー』だ。
「これ面白そうなんだよねー……」
私はチラシを見ながらそう言った。ショーが開催される日時は、丁度バイトが終わる時間。
暇があれば行こうかな。
そこで意外な出会いがあるとは夢にも思わずに……。