第8章 末っ子の秘密
「アベルよ、よくやった」
「まぁ、何とかなりました」
そう言ってアベルと呼ばれた男はアリスを連れてそのまま軍艦に入っていった。
「くそ…待ちやがれ!アリス!アリス!」
エースは最後の力を振り絞って必死にアリスの名前を叫んだが、その声が届くことはなかった。
目を覚ました瞬間、見覚えのない天井にアリスは驚いた。
…ここはどこなんでしょう?
何だか体がだるいような気がします。
力があまり入らない体を起こして周りを見渡すとそこは確実にモビーディック号の船内ではないことは明らかだった。
混乱した頭で必死に気を失う前のことを思い出す。
…そうです。
海軍の人たちがやってきて、それから私は部屋から脱走して…
それからの記憶が全然ありません。
エースは?みんなはどうなってしまったのでしょうか?
ひとりで記憶をたどっているときに、部屋のドアが開いた。
入ってきたのはセンゴクと見知らぬ海兵だった。
「目が覚めていましたか、気分はどうですか?」
「…エースは?みんなをどうしたんですか!?」
センゴクの問いかけを無視して白ひげ海賊団の安否を確認する。
「白ひげ海賊団はほぼ全滅と言っていいでしょう」
センゴクと一緒に入ってきた男が答えた。
ほぼ全滅、その言葉を聞いてアリスの頭の中は真っ白になった。
そんな…
もうみんなに会えないの?
隊長さんたちやお父さん。
エース…
「現在この船は聖地マリージョアに向かっています。5日後が到着予定です。それまではアベルがアリス宮の警護にあたります」
「よろしくお願いします」
ニコッと人の好さそうな笑顔を向けてもアリスは一切反応をしなかった。
「ではアベル。後は任せた」
「はい、元帥」
センゴクは部屋から出ていき、アリスとアベル二人だけの空間となった。
「まぁ、いきなりこんなことになるのは驚くよな」
急に砕けた話し方をしてきたアベルにハッと意識を戻した。