第8章 末っ子の秘密
しかし発射されてから船員たちの体に異変が起き始めていた。
「な、なんだこれ…」
「か、体が動かねぇ…」
ついには気を失って倒れるものまで出てきた。
しかし、海兵の方で倒れている者は一人もいない。
何かがおかしいのは歴然としていた。
「くそぉ、目がかすんでうまく焦点が合わねぇ…」
ひとり、また一人と次々に船員たちが倒れていく中でかろうじで立っていたのが16人の隊長たちと船長である白ひげ。
それ以外の船員はほとんど倒れてしまっていた。
「くっ、いったい何が起こっているんだよい」
数々の戦場を潜り抜けてきた隊長たちでもこの戦況には困惑していた。
そして自分たちの体が思うように動かないことも。
「答えは簡単だ。先程発射したものは世界政府直属の研究機関が開発した新兵器。人の目には見えず匂いもない強力な毒ガスだ」
「毒ガスだと…?なめた真似をするじゃねぇかセンゴク」
百戦錬磨の白ひげでも息が上がって顔色も悪くなっていた。
それでも膝は付かず堂々と立っている。
「それならなんでお前ら海兵は倒れてねぇんだよ」
エースは倒れている隊員たちを見て歯を食いしばりながらセンゴクを睨みつけた。
「この毒ガスはワクチンさえ摂取すれば、人体に影響は及ば差ないように緻密に作られているのだ。我々にはすでに対策がしてあるのだ」
「くそ…」
隊長たちの体力はだんだん奪われ、ついに倒れ始めた。
白ひげも膝をついてしまった。
体内の毒が回り始めたのだ。
「もはや、貴様らに用はない。早急にアリス宮をお連れしろ」
「その必要はありません」
隊長たちの耳には聞いたことのない声が入ってきた。
エースは動かない体に鞭を打って顔を越えのした方に向けた。
そこには一人の海兵が見慣れた少女を抱えて立っていた。
その少女はイゾウによって部屋に閉じ込められていたはずのアリスだった。