第1章 キスから始まる恋の話(牛島若利×白布姉)
それから、牛島君と朝食、夕食を家で食べるのが日課になった。自分で出来ると言いはしたが、毎朝ガシャガシャされては、落ち着いて仕事の準備も出来ないし、料理が破壊的に出来ないのを知ってしまったのに、放っとくなんてそんな白状な事も出来なかった。学生時代に友人に言われた、
奈緒子って、ほんと面倒見がいいよね。悪く言えばお節介だけど。
なんて言葉を思い出した。もう、そういう性分だから仕方ないのだけど。
上京してからは一人でごはんを食べる事も多く、それに慣れていたつもりだったけど、やっぱり一人で食べるよりは、誰かと一緒に食事を取る方が楽しかった。牛島君は無口な方だけど、私の作るごはんを美味しそうに食べる姿は可愛かった。背も高いし、がたいもいいけど、年下なんだな、って思う。
新年度が始まり、人事異動があり、上司が変わった。その異動してきた上司が、どうも苦手だった。やたら私にばっかり仕事を押し付けてきて、残業が増える。それに上司も一緒に残ってくれるんだけど、二人きりになると、なんかどうも発言がセクハラくさい。愛想笑いで誤魔化していたけど、最近は本当にしんどくてたまらん。
牛島君も大学が始まってから、帰りが遅くなったが、私も残業の為、大体同じ時間に帰宅。そしてごはんを食べる。
「そういえばさ、私が前に言ったこと覚えてる?」
小首を傾げる牛島君。なんだ、大きいのに可愛いな。
「賢二郎じゃ牛島君にとって力不足かって事。」
「そんな事思った事はないが。」
「青城の及川君、口説いてたじゃん。賢二郎じゃ力不足だったからでしょ?」
「及川は、スパイカーの力を100%引き出すセッターだ。」
「うん、知ってる。賢二郎が及川君は怪物って言ってた。」
「白布は、如何なる時もスパイカーを信じトスをあげる良いセッターだった。白布を力不足と感じたことは無い。及川と白布、比べた所で意味はない。」
「それって、賢二郎は賢二郎、及川君は及川君でセッターとして認めてるって事?」
「そうだな。」