第6章 有終の美を貴女に 6
辺りもすっかり暗くなり、街灯がコンクリートを照らす。
「...それでは、この辺で」
家まではあと数十m、ここで別れるのが賢明だろう。
そう思い、この辺で別れましょう、と言おうとした私を、彼女が遮った。
「そういえば私、あなたのお家知らないのよねー...」
あからさまな嘘だった。
初めて私と会った場所だ。しかも引越しなんてしていない。
「...巫山戯てるんですか?」
「何も?」
悪びれもなく彼女はそう言いのけた。
「だから、あなたのおうちを知りたいんだけど...駄目」
「お断りします」
今度は私から言葉を遮る。
大体、勝手に家を知ることすらも犯罪だろう。
「えー...恋人になったっていうのに...」
「だから、今はあくまでもお試しだと言っているでしょう」
「私はお試しなんかにするつもりなんてないんだけど...?」
しつこい、と言おうと口を開いた瞬間だった。
柔らかい感覚が、唇に触れた。