• テキストサイズ

【黒バス/HQ】アイシテルの続き

第5章 黄瀬涼太 *



「おやすみ」

前髪に落ちるおやすみのキス。

ゆるむ口許を見られたくなくて、目の前の胸にぽすんと顔をうずめる。

明かりの消えた寝室でそんな心配をする必要なんてないのに。

「おやすみ……なさい」

ふわりと漂うお揃いのボディーソープは幸せの香り。

規則正しく頬を打つ鼓動と、いつものように髪を梳いてくれる指が愛しくて、でも切なくて、心がまだこんなにも震える。

「結っち」

「っ、な……何?」

「もしかして……泣いてる?」

気配だけで変化を感じ取った彼の声が、空気を甘く揺らす。

「な、泣いて……なんか」

幸せすぎて──なんて言えるわけない。

それ以上何も聞かずに抱きしめてくれる腕の中、子供のように丸めた背中をあやしてくれる優しい手に、涙があふれる。

「ね、結っち。今、ちゃんと幸せっスか?」

言葉にならずにコクコクと頷くのが精一杯。だって今、声を出したら気づかれてしまうから。

「じゃあさ、もっと幸せにするから……泣かないで」

顔にかかる髪を耳にかけ、囁かれるテノールがかすかに震える。

これ以上の幸せは世界中どこを探しても見つからないのに。

暗闇の中、手探りで頬に触れる指先が、涙の跡をたどり、唇をなぞる。

もっと触って

声の代わりにこぼれた吐息に反応するかのように、音もなく体勢を変えた身体から発たれる熱に、一瞬で感染する。

「……結」

「りょ、ん……ン」

抱いて

あさましい懇願を飲みこむように重なる唇に、自ら捧げた舌先を軽く噛まれて、跡形もなく崩れる理性。

素肌を這う熱い手にあっという間に追いつめられて、シーツの波に深く溺れていく。

明日なんてこなくてもいい

このままアナタの熱ですべて溶かして

「りょ……た、涼太……っ」

うなりをあげてしなる背中に、私は悦びの声を上げながら縋りついた。





end
/ 87ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp