第19章 黄瀬涼太 【R18】
「りょ、た……」
耳の横に顔をうずめ、荒い呼吸を繰り返す恋人の頭を、結は力の限り抱きしめた。
安全日であることは確信していたが、万が一ということもある。だが、不思議と後悔はなかった。
じわりと奥に満ちる愛の証に、胸の奥も満たされていく。
(幸せ……)
だが、そんな余韻に浸る間もなく、埋められたままの楔がざわりと蠢く気配に、結は嗄れた声を上げた。
「うそ、でしょ」
顔の横に手をつき、ゆっくりと上体を起こす黄瀬の前髪から覗く瞳が、ギラリと光を放つ。
乱れた髪をかきあげる指も、呼吸とともに波打つ腹筋も、だが見惚れるほどに美しいのはいつもと同じ。
「それはこっちの、ハ……セリフっスよ。まさかこれで終わりだなんて、思ってない、よね」
「待って……ん、アっ」
繋がったまま片足を持ち上げられたかと思うと、ベッドの上で反転させられて。
背後から覆いかぶさってくる分厚い胸板から伝わる鼓動が、何を意味するのかは明白だ。
「抜かずに何回イけるか……試して、みないっスか?」
「は、はい?」
「大体さ、結はバックが一番スキじゃないスか。あんなんじゃ……足りないっしょ?」
耳をなぶる囁きは、天使の声ではなく悪魔の吐息。
指摘したいことは色々あるのに、問答無用とばかりにピストンを開始する腰が、水音とともに肌を打つ。
「ゃ、ん」
「今日はオレで……いっぱいにしてやる、よ」
「ン、りょ、たぁ」
スイッチの入った黄瀬を止めることは至難の業。そして、この腕に触れたら、あの瞳に見つめられたら逃れることは不可能だ。
「結……もっと、欲しい。ね、ダメ?」
甘えた声に絆されて、何度目か分からない高みへ翔ばされたかと思うと、強引な腕と力強い腰に容赦なく責め立てられて、悲鳴を上げるカラダがベッドで跳ねる。
「ひ、ゃん……も、ぅ」
「も、ギブっスか?仕方ない、っスね。じゃ、あと一回、いや……二回?」
「に、二回?」
時を告げる蛍光塗料の数字が、視界のすみで白くけぶる。底なしの体力を持つ恋人の、濃厚な夜は今日も朝まで続くのだろうか。
「バスケで鍛えたオレの体力、ナメんなよ」
穏やかに、そして激しく打ちつけられる波に翻弄されながら、結は何度も注がれる熱いしぶきを、身体の奥で飲み干した。
end