第25章 追憶
~岩泉side~
俺が打ったスパイクが原因で、紡が・・・。
プツリと糸が切れたように倒れ込む紡を見て、心臓が止まるかと思った。
山「城戸さん!!大丈夫?!しっかりして!!・・・城戸さん!!」
『ん・・・』
溝「おい!しっかりしろ!!及川!烏野の顧問呼んで来い!!急げ!!」
コーチが及川に叫び、及川が走って烏野の顧問を呼びに行く。
その間も、烏野の1年は紡を抱き抱えたまま、名前を呼び続けていた。
練習試合も負けで終わり、少し苛立ちながら残りの時間まで練習を再開した俺達。
いつもと同じ練習、いつもと同じメンバーでの練習をしていて。
その端々で、いつの間にか紡の姿を追っていて。
見えてしまった、光景。
紡がこの1年の顔に手を当て、微笑みながら何かを話していて。
それでコイツも、紡の手に自分の手を重ねて笑い合っていて。
正直・・・妬けた。
そんな諦めの悪い自分自身にも苛立ち、久々に上げた及川のトスにタイミングが合わせられず、無理やり打ち込んだスパイク。
金田一が拾い損ねたのも仕方ねぇ・・・
俺があの時、無理やりスパイクを打たなければ。
及川が烏野の顧問と主将を連れて戻り、烏野の顧問が、頭を打っているかも知れないからと、コーチに救急車を呼ぶ事を頼んだ。
息が・・・出来なかった。
息をする方法が思い出せないくらい、俺の中で時間が止まっていた。
武「山口君、城戸さんを寝かせましょう」
山「い、嫌だ!オレの、オレのせいなのに!」
周りの目も気にせず涙を流しながら、必死に紡を守ろうと離さないコイツが・・・羨ましくさえ思える。
・・・こんな時に何考えてんだ、俺は。
岩「お前のせいじゃない・・・俺の打ったスパイクだ」
そう声をかけるのが、精一杯だった。
烏野のマネが紡の衣服を緩め、国見が運んで来た氷袋でコーチが頭を冷やし始めると、小さな声を上げながら紡が目を開けた。
意識が、戻ったのか?!
思わず身を乗り出して、顔を覗く。
まだボンヤリと虚ろではありながら、さっきまでとは違う紡の表情に胸を撫で下ろした。
澤「紡、おかえり」
瞬きを繰り返す紡に、烏野の主将がそう言いながら頭を撫でる。
現状がよく分かっていないのか、撫でられるまま、紡はまだボンヤリとしていた。
『えと・・・た・・・ただいま・・・?かな?』