第2章 まっすぐな想い
岩泉先輩。1年前、憧れの先輩が恋人になった。硬派でカッコよくて、自分の事なんか知らないだろうと思いながら告白した。
『岩泉先輩、ずっと憧れていて、ずっと好きでした。』
「でした・・・って。お前の中では、俺はもう過去形なのか?」
『いえっ。あのっ今も大好きですっ!』
元気よく大きな声で言ってしまい、恥ずかし過ぎて岩泉先輩の顔を見れず俯いたまま顔が上げられなかった。
「プッ・・・クククッ」
そんな様子ををコッソリ見ていた及川先輩が笑いだし
「岩ちゃん、それはないでしょ。女の子が一生懸命に好きだって言ってくれ・・・」
「グズ川テメェ、なに覗いてやがるっ」
「岩ちゃん苦しいよっ、ネクタイ引っ張らないでっ。オレは岩ちゃんが一人でフラッと居なくなるから心配で~」
「そんな心配いらねぇんだよっ」
これが2人のコミュニケーションと知っているけど、さすがに放置するわけにもいかず駆け寄った。
『あの岩泉先輩!お話聞いて下さってありがとうございました。私は大丈夫なので手を離してあげてくださいっ』
「・・・だとよ。」
岩泉先輩は及川先輩のネクタイをパッと離した。
「あぁ苦しかった。岩ちゃんの乱暴者~」
及川先輩がおどけて両手をパタパタするのをみて、思わず笑ってしまった。
「あっ、紡ちゃん、やっと笑ったね」
『えっ!どうして名前・・・』
「ふっふっふ。及川さんはかわいい女の子の名前はみ~んな知ってるのさ」
おどけて見せる及川先輩は、多分、気を使ってくれたんだと思った。
『じゃあ、あの、私はこれで失礼します。ありがとうごさいました。』
軽くお辞儀をして、そのまま立ち去ろうとした。
「ちょっと待てって。」
歩き始める私の腕を岩泉先輩が掴む。
『あ、の?』
不意に掴まれた腕に視線を送りながら岩泉先輩の言葉を待つ。
「・・・ってもいい」
『え・・・』
「付き合ってもいいって言ったんだ」
予想もつかなかった言葉に、思わず黙り込んでしまった。
イマ、ナンテ?
「おい、聞いてんのか?」
『あ、は、はいっ!あの、えっと、あのっ・・・ふつつか者ですがよろしくお願いしますっ!』
「紡ちゃん、お嫁いりでもするみたーい。」
及川先輩がツッコミ入れた事で岩泉先輩も肩を震わせていたけれど、私は思考回路がショートして固まっていた。