第16章 初めの1歩
私はそれを、見て見ない振りをしながら、まだ何かを言おうと言葉を探している澤村先輩を、瞬きも忘れ見続けていた。
澤「今日さ、城戸さんと月島とのやり取りを見た時。言い方は良くないかも知れないけど、他人の為に壁になり、そして無条件で涙を流せる城戸さんに、心を引っ張られたんだ。だから、途中で止めに入ることが出来なかった」
ホントなら、すぐにでも間に入って止めるべきだったんだけどね、と。
影山が止めに入ってくれて、ちょっとホッとしたよなんて、付け加えながら軽く笑う。
私は影山と顔を合わせたものの、何となくお互いに恥ずかしくなり、お互い横を向いた。
『澤村先輩・・・菅原先輩も。勢いに任せて、酷いことを言ってすみませんでした』
テーブルに鼻先が付いてしまうほどに、頭を下げた。
菅「べ、べ、別に気にしてないからっ!ね、大地?」
澤「そうだな、そんなに頭を下げなくていいから。突然の事だし、急に家まで来ちゃったし、いろいろ怒られるかな?とかは予想してたから」
『さっきも言いましたけど、家に来た事は怒ったりしません。むしろ、兄達は喜んでいると思います。私は元々、その、友達・・・少ないですから・・・』
バレー、バレーと、そればかり追いかけて、女の子同士で恋バナしたり映画行ったりなんて皆無だった。
流行りのドラマも見ないし、ファッションだってよく分からない。
そんな日常を、今までずっと過ごしてきた。
でも、それには後悔する事なんてなかった。
それでいいと、思っていた。
でも、ひとたびバレーを離れてしまうと、周りを見回しても友達と呼べる相手も、居なかったんだ・・・
それに、特に高校3年生である2人には、仲間と過ごす時間が大切になっていくのも私にだって分かる。
小さく小さく息を吐きながら、顔を上げた。
『澤村先輩は、バレーが好きですか?』
予想もしなかった私からの質問に、一瞬目を開いた澤村先輩が、瞬きを繰り返す。
澤「好きか嫌いかって言われたら、前者だね。俺はずっとバレーを続けて来て、いま、ここにいるんだから」
真っ直ぐ前を見て、真っ直ぐな答えをくれる。
もう、答えはひとつしか思い浮かばなかった。
『だったら尚更、この話はお受けできません・・・』
菅「紡・・・ちゃん?」
キッパリと言い放つ私を、菅原先輩が焦った様子で仰ぐ。
