第1章 立ち止まる時間
ピーッ・・・
試合終了のホイッスルが鳴り響く。
中学最後の大会で優勝候補と確信されていた北川第一女子バレー部はまさかのベスト4終わり。
優勝して思いっきり喜びの涙で飾りたかったけど、それも叶わなくなった。
及川先輩と、ハジメ先輩にあれだけアドバイスして受けながら特訓して貰ったのに・・・
『ハジメ先輩に叱られちゃうな・・・』
そう呟くと、自分の手をジッと見つめた。
もともとリベロだった私は、あるとき突然セッターに指名されポジションチェンジをした。
もちろん今までセッターなんてジュニア時代にちょびっとかじったことがある程度で、経験値があるという程のものでもなく、戸惑いの方が大きかった。
それまでセッターをしていた先輩が、家庭の事情で転校してしまい、チーム内の他のセッターは突然バレーを辞めてしまった。
そんな状況の中、顧問の先生からリベロ枠は何人もいるし、私みたいに身長が低くてもセッターは出来るからっていう理由だけでポジションチェンジを強いられた。
そう。
身長。
うちの家族は両親も2人いる兄も高身長だというのに、どういうわけか私だけ身長が伸びず、未だ143cmのまま成長が止まってしまった。
お母さんは学生時代から高身長で悩まされていたせいか
『女の子は小さい方がいいのよ~、お母さんみたいに身長ばっか高くなると可愛い服なんて似合わないし、大人になってもヒールは履けないしね~』
なんて、呑気に言っていたけど。
兄が2人ともバレーボールをやっていたから、2人も3人も同じだからという理由で私もジュニアチームに入り、今に至るわけで。
背の高い小学生の中でちびっ子扱いされていた私の事情など誰も分かってはくれなかった。
そんな中で背が小さくてもリベロなら行けるだろって言った兄の言葉に勇気づけられ、大好きな兄たちと日が暮れるまで練習していた事を糧に、挫折することなく今日までバレーを続けてきて。
それも今日で終わる。
この大会を、最後に自分達の代は引退するのだ。
私はもう1度、ジッと手を見つめた。
試合の中盤からセッター潰しにあい、相手チームからの攻撃にファーストタッチでボールを受け、セッターの役割を果たすことが許されない状況にされた。
ホント、ハジメ先輩に怒られちゃうな。
でも、今更もう遅いんだ。