第34章 スイッチ・オン
試合が始まってから、立て続けに点を取られてる。
向こうからの攻撃での点と、こっちのミスで落とした点。
同じ1点でも、その重さは違う。
前に影山が日向君に、自分が取った1点でも日向君が取った1点でも同じ1点だ···とか言ってたけど。
取られる側からしたら、全然違うよ···
桜太にぃは私に、とにかくボールを落とすなって言って。
私はほとんど拾ってるけど、そこからの攻撃に上手く繋がらない。
トスミスとか、ブロックされたりとか。
もっと、ちゃんと攻撃が組み立てられるような繋ぎをしないと、この試合···負ける。
道「ワンチ!!」
『私が!!』
青城からの攻撃を道宮先輩がブロックで弾いて、大きく膨らみながらボールが流れた。
···マズイ!
この軌道だとライン超えちゃう!
ボールの落ちる先には慧太にぃ達がいて、無理に突っ込めば危ないのは分かってる。
だけどこのボールを落としてしまったら、また大きな1点の差が出来ちゃう···
桜 ー 大丈夫、紡なら出来るよ ー
私、なら···出来る!
勢いを殺すことなくボールの落下地点へと向かう。
『慧太にぃ!そこどいて!!』
慧「紡?!」
ガタンと立ち上がる慧太にぃの横に飛び込めば、手のひらいっぱいにボールの感触。
そのままコートの方に拾い返して···
『道宮先輩!上がってます!!』
道「な、ナイスレシーブ!!」
ボールは繋がった!
けど、それと同時にあちこちに走る痛み···すぐに立ち上がれたから痛いのは今だけで大したことはない。
もしもの次の攻撃に備えて、駆け足でコートに戻り試合の流れを把握する。
さっき繋げたボールは青城側にブロックされて、またこっちのコートに戻ってる。
でもちゃんと拾われて、またセッターへと繋がれた。
「結!」
道「任せて!」
セッターから繋がれたボールを、道宮先輩がスパイクする。
ー ピッ! ー
ハジメ先輩のホイッスルが鳴り、ようやく烏野側へと得点された。
ひと安心、と思いながら何気なく手の甲でこめかみを流れる汗を拭えば、小さな違和感を覚えて拭った汗を見る。
そこにあったものは汗ではなく。
桜「先生、タイム取って下さい」
武「は、はい!審判、タイムを!」
ほんとに微量ではあるものの、それは紛いもなく人の血液そのものだった。